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高齢「おひとりさま」が1千万人時代へ 死後の手続きセット「終活」新サービスが注目

産経ニュース 2024年7月23日 9時0分

近くに家族など頼れる人のいない一人暮らしの「おひとりさま」が増加する中、身寄りのない高齢者らが人生の最期を見据えて準備する「終活」が注目を集めている。死後も本人の希望に沿った形の葬儀などを実現するため、民間では今年、葬儀と死後の事務手続きなどがセットになったサービスが登場。高齢単身世帯は今後30年で4割超増える見通しで、行政側も葬儀などの生前契約の支援に乗り出している。

不安の相談相次ぐ

関西圏や首都圏で葬儀場を展開する大手葬儀会社「公益社」を傘下に持つ燦(さん)ホールディングス(大阪市)は5月、関西圏でおひとりさま向けの新商品「喪主のいらないお葬式」を発売した。

新商品は、公益社の葬儀サービスと、行政書士や司法書士などが提供する死後の事務手続き、関係者への連絡などがセットとなっている。価格は約70万~175万円で、サービスの異なる多くのプランを用意している。

新商品を手掛けた背景には、おひとりさまからの終活相談が多く寄せられていることも挙げられる。末期がんで余命を宣告された70代女性は、ホスピスに入るにも「身元保証人になる人がいない」と相談。さらに、納骨を希望する寺があるものの「親類に迷惑をかけられない」という悩みも打ち明けられた。

ほかにも、80代女性は認知症になった場合の不安を吐露。障害のある子供を抱えたまま配偶者を亡くした60代男性からは、自身の死後のことを依頼したいという相談もあったという。

2割超が高齢単身世帯に

終活を考える高齢のおひとりさまが今後、日本で確実に増加が見込まれることも、新商品の発売を後押ししたようだ。

国立社会保障・人口問題研究所が4月に発表した将来推計では、国内の単独世帯数は令和2年の約2115万世帯(一般世帯総数の38%)から、30年後の32年には約2330万世帯(同44%)に増加。中でも65歳以上の単独世帯数は2年の約738万世帯(総数の13%)から、32年には約1084万世帯(同21%)に増えるとしている。

身寄りのない高齢者にとっては、誰にも気づかれないまま世を去る孤独死が現実味を帯びてくる。死後に望まぬ形で遺体を行政に処理される事態にもなりかねないが、そうした「リスク」を理解していないおひとりさまが多いという。公益社大阪本社企画部の大坪康介企画課長は「人にはそれぞれ尊厳がある。(新商品で)生前の希望に沿った葬式を実現させてあげたい」と力を込める。

生前契約「永続性」に注意を

おひとりさまの死後を見据え、行政も終活支援に乗り出している。

神奈川県横須賀市は平成27年、頼れる身寄りがなく、金銭的にゆとりのない一人暮らしの高齢者が、葬儀社と低額で生前契約できるよう支援する「エンディングプラン・サポート事業」を開始。30年には家族や知人らへのメッセージや口座情報などを書き留める「終活ノート」の保管場所や、墓の所在地といった情報を生前登録する事業も始めた。

また、神戸市や静岡県熱海市も単身世帯の高齢者が葬儀社と葬儀や埋葬の生前契約をサポートする事業を展開。東京都豊島区では、高齢者向けに終活に関する相談窓口「終活あんしんセンター」を設けている。

終活事情に詳しい葬送・終活ソーシャルワーカーの吉川美津子さんは、葬儀だけでなく、入院や介護施設に入るときも保証人が必要なケースがあるとし、「(おひとりさまは)暮らしの中で第三者に頼らなければいけない状況があった際、死後も誰かに託さなければいけないことに気付いてほしい」と訴える。

一方で、生前契約で死後に葬儀などの手続きを代行するサービスを提供する業者は多いが、生前契約は永続性が重要とした上で、「存続できる企業か、信用できる企業かをきちんと見極めてほしい」とも話している。(前原彩希)

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