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福島・晩秋の風物詩 東日本女子駅伝終了の背景に今時の事情 ボランティアの高齢化と減少

産経ニュース 2024年10月20日 7時0分

紅葉に染まる福島市で繰り広げられる、晩秋恒例の「東日本女子駅伝」が、40年目となる11月10日の第39回大会で、その歴史に幕を下ろすことが決まった。女子中・長距離陸上界の有望選手発掘や若手ランナー育成を目的として昭和60年に始まった大会。終了に至った要因のひとつに、運営を支えるボランティアが高齢化、年々減り続けているという今時の事情があった。

「苦渋の決断」

大会は昭和60年に始まり、新型コロナウイルスの感染拡大で中止された令和2年を除き毎年秋に開催されてきた。主催は福島テレビと東北陸上競技協会で、サンケイスポーツなどが後援している。中学生から一般までの代表選手が9区間42・195キロでたすきをつなぎ優勝を争う。最後のレースは北海道から静岡県まで、18都道県のチームが参加する。

中学、高校、大学、一般と、異なる世代でチームを構成し、若いランナーにとっては憧れの舞台になっていた。五輪に4大会連続出場した福士加代子さん、土佐礼子さんや渋井陽子さんら、大会に出場した五輪出場選手は25人に上っている。

伝統の大会終了の経緯について、福島テレビの小柴宏幸専務は「若手ランナーの育成という、所期の目的と役割はおおむね果たされたと判断した」と説明。ただ、「昨年の大会以降、相当議論した。苦渋の決断だった」とも話す。

経費増えて運営圧迫

背景にあるのはボランティアの減少だ。大会運営には約2100人が携わり、ボランティアは約800人に上る。参加しているのは県体育協会の下部組織のメンバーら。運営を熟知し〝小回りが利く〟サポートは、レースを支える大きな力になってきた。

しかし、毎年参加していた人が高齢で活動できなくなるなど、ボランティアは減り続けてきた。新たに若手の協力を仰ぐことも難しく、大会関係者は「消防団などと同じ状況」と肩を落とす。駅伝に欠かせないコース警備などのボランティアが減った分、不足した人員を警備会社に依頼するなどして経費も増え、大会運営を圧迫した。

関係者の高齢化に伴うリタイアが相次ぎ、伝統行事が途絶えるケースは全国各地で起きている。今回はそれがスポーツイベントにも波及した格好だ。

福島陸上競技協会の鈴木浩一会長は「終了は非常に残念」とした上で「初めは女子中距離選手を強化したいという思いだった。今はロードレースなど色々な大会がめじろ押しだが東日本女子駅伝の影響は大きい。これも成果のひとつ」と振り返る。大会終了を惜しむ関係者の声は少なくないという。

最後のレースは、11月10日午後0時3分にスタートする。(芹沢伸生)

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