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サウナの汗流す日本一長い鍾乳洞 天然の水風呂でととのう 大分・豊後大野 西日本の水

産経ニュース 2024年8月16日 10時0分

サウナブームのいま、サウナーから熱い視線を集めているのが大分県豊後大野市にある「稲積(いなづみ)水中鍾乳洞」。洞窟の前に設置されたテントサウナでかいた汗を流すのは鍾乳洞の中にあり、常に水温16度に保たれた天然の水風呂だ。世界でも例をみない鍾乳洞の水風呂につかれば、猛暑日でも一気にリフレッシュできる。

サウナ聖地に

薪(まき)ストーブが設置された専用のテントサウナで汗を流すこと10分余り、扉を開けて鍾乳洞入り口まで30メートルほど歩いて水に入ると「冷た~い」「気持ちいい~」。思わず声が漏れる。水底も天井も岩。水中には小さな魚の姿。地中を通って濾過(ろか)された天然水の清らかさに癒やされる。体の熱がとれると、青空のもとリクライニングチェアでしばし休憩。屋内サウナとはひと味違う「ととのう」が体験できる。

鍾乳洞サウナは令和3年3月の開業から話題を集め、週末は3カ月先まで予約が埋まる人気という。宮崎市からカップルで訪れたサウナ好きの男性(25)は「サウナの温度も高く水もきれいで満足度が高い。ここでしかできない体験なので、人に言いたくなりますね」と写真を交流サイト(SNS)にあげる予定という。

施設運営会社の青松善輔支配人は「お客さんの半分以上は九州以外から。楽しんでもらって豊後大野市をサウナの聖地にしたいんです」と語る。

子供が発見

稲積水中鍾乳洞が見つかったのは昭和51年。地元の子供が池に潜って遊んでいるときに〝穴〟を見つけたのが始まりという。翌年からダイバーによる調査が始まり、水中鍾乳洞は1キロに及び、日本で最も長いことが明らかになった。全貌はいまだ判明しておらず、現在も調査が続けられている。

平成26年の調査の際、参加したダイバーから「一般の人も潜れるようにしませんか」と提案があり、安全面などを整えて31年3月から体験ダイビングやシュノーケリングを楽しめるようになった。日本初の水中洞窟ダイビングだった。

一方、24年に「おんせん県」を商標登録申請するなど「温泉」を前面に売り出す大分県にあって、温泉が出ない豊後大野市は観光面でキャンペーンなどに乗り切れない問題を抱えていた。「何かないか」と関係者が悩んでいたときに、地元でアウトドアサウナのイベントが開催された。参加した青松さんらは「メチャクチャ気持ちいい。これをみなさんにも知ってもらいたい」。

令和2年に地域で「おんせん県いいサウナ研究所」を立ち上げ、清流を水風呂に使ったサウナなどをスタートすると、3年には市が「サウナのまち」を宣言。温泉がなくても、日本ジオパークとユネスコエコパーク両方に認定されている同市には豊かな自然があった。いまでは日本唯一の鍾乳洞サウナを目的に九州を訪れる人も少なくないという。

外気浴も

サウナは2時間貸し切り制で1人6500円。人数に合わせて3つのサイズのテントがある。専属スタッフが付いてロウリュ(サウナストーンに水を掛けて蒸気を立ち上らせる)などを担当。テント内は一般的なサウナよりも高温で、ストーブが近いためロウリュの熱気をダイレクトに感じられる。水風呂のあとは川のせせらぎを聞きながら外気にあたるもよし、冷暖房完備の屋内施設もあり、ゆっくり整えられる。

また施設内にはキャンプ場のほか、食事処、レトロなおもちゃや映画ポスターなどが展示された「昭和タイムトリップ ロマン座」、大観音像、美術館などもあり、家族で楽しめる。(中野謙二)

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