人気アイドルグループの「ももいろクローバーZ」は例年4月、地方自治体とタッグを組み、地域おこしのライブを開催している。全国からファンが集まって10億円近い経済効果を生み出す上、交流人口の拡大にも寄与するため、開催地に名乗りを上げる自治体は多い。今年は、20の自治体の中から新潟県新発田市が選ばれ、市内の温泉ホテルなどは開催日を中心に、予約で満室状態という。そのフィーバーぶりを追った。
「ももクロ春の一大事」と銘打った地域おこし目的のライブは、平成29年から始まった。4月中の2日間で2公演を行い、約2万~4万人のファンが全国から駆けつける=表参照。今年は同月12、13の両日、新発田市の桜の名所として知られる五十公野(いじみの)公園で開かれる。
来場者は2日間で約2万人を見込み、同市としては過去最大級のライブになるという。
温泉ホテルは満室
昨年11月下旬、ライブを主催する東京の芸能事務所が同市での開催を発表した直後から、市内のホテルや温泉旅館に全国から問い合わせが殺到。あっという間に部屋が埋まったという。
市内の月岡温泉にあるホテルひさご荘(43室)の担当者は「開催地発表の翌日には、4月11日と12日分の部屋が埋まってしまった」と声を弾ませる。
JR新発田駅前の新発田第一ホテル(120室)も「発表直後から数えきれないほどの問い合わせが来ている」。このホテルでは、宿泊日の2カ月前から予約を受け付けており、2月12日前後の申し込みは激戦となりそうだ。
さらに、同市の二階堂馨市長の家業は地元の老舗旅館。1月の定例記者会見で「家内に聞いたら、この日は部屋が満杯だと言っていた。観光スポットから少し離れたうちの宿が満杯になるくらいだから、ももクロの影響力は相当なもの」と驚いていた。
昨年の開催会場となった京都府亀岡市では、宿泊費や飲食費、交通費、土産代などイベント全体の経済波及効果は推計約8億4千万円に上った。さらに、同市企画調整課の担当者は「ライブ終了後も、ももクロのメンバーが市のイベントに参加してくれたり、ファンが〝聖地巡礼〟として繰り返し訪れてくれたりすることも大きい」と話す。
着々と準備
今年1月23日には、新発田市でのライブを地元として盛り上げるための準備委員会を設置。委員会には、市、市観光協会、商工会議所、月岡温泉旅館協同組合などが参加し、各団体の役割分担などが話し合われた。
開催日までに行う大きな取り組みの一つとして、コラボ商品の開発がある。ロイヤルティー(権利の使用料)を支払った上で、市内の事業者がももクロとのコラボ商品を開発し、会場周辺で販売する。希望する事業者は、市を通して主催者に申し込み、了承を得られれば開発・販売ができる。
関係者によると、「酒蔵がももクロのラベルを貼った日本酒を売り出す構想を持つなど、市内の事業者の関心は高い」という。
また、全国から来たファンが、ライブ後に集まって語り合える場を設けてほしいとの要望も市に寄せられており、今後検討する。
ライブを心待ちにしているファンが会場周辺の下見も兼ねて、同市を訪れている。市観光振興課の山田亮一課長補佐は「昨年12月、富山県や神奈川県からファンが来ていた」と明かす。
新発田市では、ライブの開催日のころに桜の見頃を迎える。山田氏は「ももクロと満開の桜で街が桃色一色となる中で、ファンを迎えたい」と意気込む。(本田賢一)