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騒いでもOKな劇場体験会が全国に浸透 障害のある子供向け舞台プログラム10年の成果

産経ニュース 2024年7月15日 11時0分

発達障害や知的障害のある子供たちが劇場で舞台芸術を楽しめるよう、実際に公演を体験する機会を設ける国際障害者交流センター(ビッグ・アイ、堺市南区)のプログラム「劇場って楽しい!!」が始まってから10年を迎えた。当初は同センター内で実施していたが、各地の劇場からの依頼で全国で公演されるように。担当者は「いずれは各劇場が主体となって開催されるようになれば」と期待する。

「『始まるよ~』という大きな音が鳴ります。練習してみましょう」

3月、兵庫県立芸術文化センター(同県西宮市)で開かれた公演では開演前にチャイムが鳴り、客席が暗くなることなどを説明した後に演奏が始まった。

来場したのは、障害のある子供とその保護者ら約530人。同センターでの公演は2回目で、笑顔で音楽に集中する子供もいれば、途中で何度も席を立つ子供の姿も。保護者は「太鼓の音は苦手みたい」「前回よりも落ち着いて楽しんでいた」「一般の公演でも大丈夫そう。音楽が好きな子なのでうれしい」と、それぞれの収穫を語った。

劇場では通常、静かな鑑賞が求められるが、障害特性のため慣れない場所への不安から声を出したり、席を離れたりしてしまう可能性があり、保護者も劇場に連れて行きにくい。

あらかじめ劇場の雰囲気や音楽などに触れておく「練習」の機会があれば、公演を楽しめるようになる子供もいる-。そんな保護者たちの声を受け平成26年、プログラムは始まった。周囲の目を気にする必要がなく、入退場も自由なのが特徴だ。

30年に障害者文化芸術活動推進法が施行されてからは全国の劇場からサポートの依頼がある。これまで熊本や大阪、東京など各地で計40回以上開催している。

字幕の出し方といった運営ノウハウはビッグ・アイが提供するほか、障害の特性などについての研修も行っている。副館長で事業プロデューサーの鈴木京子さんは「一度きりの開催では、本人も劇場側も学びきれない」と、継続的な取り組みの必要性を訴える。

公演を楽しめるようになれば、地域の劇場のお客さんになる。兵庫県立芸術文化センターの担当者は「劇場の社会的意義を深める事業で、社会の未来を作ることにもつながる」と意義を強調した。鈴木さんも「障害のある子供たちのためだけでなく、その先に続くものにしていきたい」と語った。(藤井沙織)

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