平成のスイーツブームを牽引(けんいん)した神戸の名店のレジェンドシェフたちが作るケーキやクッキーが食べられるセレクトショップが神戸市西区にオープン、注目を集めている。コロナ禍後、逆風下にある「神戸スイーツ」を応援するために企画。シェフ本人が登壇するイベントを開催したり、それぞれが得意とするお菓子の詰め合わせセットも販売。惜しまれつつ閉店した伝説の名店のシェフも参加するなどして、東京など遠方から足を運ぶファンも少なくないという。
神戸スイーツ専門のセレクトショップ「リトル神戸」。令和5年10月、神戸市営地下鉄西神中央駅すぐのショッピングモール「プレンティ西神中央」に出店した。
スイーツ専門サイト「関西スイーツ」を主宰する三坂美代子さんが企画し、神戸市が全国に通用する技術の保持者と認定した「神戸マイスター」4人に依頼した。
注目を集めたのは平成29年に閉店した伝説の名店「御影 高杉」(東灘区)元シェフの参加だ。
元シェフの高杉良和さんは大阪の有名ホテルでフランス料理を学んだ後、洋菓子職人に転身。正方形のショートケーキの考案者として知られる。3枚のパイ生地でカスタードクリームとフルーツを挟んだミルフィーユが絶大な人気を呼び、全国からお客さんを集めた。
神戸を代表する老舗「ユーハイム」(本店・中央区)の元シェフ、井谷眞一さんはドイツで10年以上修業して難関とされるドイツの国家資格の製菓マイスターを取得した。独立後はバウムクーヘンの専門店「バウムウントバウム」(灘区)を開業している。
「神戸洋藝菓子ボックサン」(本店・須磨区)のシェフ、福原敏晃さんは日本人の舌に合う洋菓子作りを追求してきた。ケーキのスポンジ生地にこだわり、10種類のスポンジを考案した。
「レーブドゥシェフ」(垂水区)のシェフ、佐野靖夫さんは伝説の名店、東京・銀座の「エルドール」で修業した。同店の味を発展させ、香料のバニラビーンズを使ったアイスクリームは絶品とされた。
シェフ本人が登壇する試食会や講習会などイベントが好評。インスタグラムなどSNSで情報が拡散され、北海道や東京など全国からファンが集まるという。
令和6年12月7日には高杉さんが自身のお菓子づくりについて熱く語る講演会を開催した。さらに、この日のために用意した13種類のシュトーレンを食べ比べする試食会というぜいたくな企画。参加者は、あこがれの高杉シェフとスマートフォンで記念撮影するなど満足げだった。
洋菓子業界はコロナ禍後も経営不振から抜け出せていない。そこに原材料費、人件費の高騰が追い打ちをかける。もともと中小、零細店が多く、名店、人気店でも例外とはいえない。
リトル神戸は、「神戸スイーツ」の情報発信、技術の継承、職人の育成を事業目的に掲げ、シェフたちもこれに賛同し全面協力を申し出た。
出資者の一人でもある三坂さんは「シェフとファンの交流の場を継続させることで神戸スイーツを応援していきたい」と話している。(安東義隆)