Infoseek 楽天

「シティーハンター」「あぶない刑事」…映画・ドラマの神戸ロケ、経済効果は初4億円超

産経ニュース 2024年8月1日 8時0分

神戸市内での映画やドラマ、CMなどの撮影を誘致・支援する神戸市の外郭団体「神戸フィルムオフィス」(同市中央区)が令和5年度にかかわった作品の直接経済効果が、過去最高の約4億2680万円となった。平成12年のオフィス設立から約四半世紀。米動画配信大手「ネットフリックス」の映画「シティーハンター」の長期ロケが神戸市内で行われたのが大きな要因だが、ロケ誘致を続けた地道な取り組みが実を結んだ。

巨大トンネル施設で銃撃戦

「神戸でのロケ期間が長く、セットも大がかりだったので、1億円以上の直接経済効果があった」。神戸フィルムオフィスの土屋千佳課長は、撮影支援したシティーハンターの経済効果について振り返る。

同オフィスでは、撮影隊が撮影地で直接支払う費用を「直接経済効果」として推定。具体的には宿泊費や飲食費、交通費や資機材レンタルなどのほか、施設利用料やロケセット施工料、警備費などが含まれるとしている。

シティーハンターでは、神戸市がポートアイランド(中央区)などの人工島造成時に、土砂をベルトコンベヤーで運搬するために掘り、現在は使われていない巨大トンネル施設(西区)にクライマックスの銃撃戦シーンのセットを設営した。このシーンの準備に約4カ月▽撮影は16日間▽さらに撤収・現状復旧に約1カ月-と計約半年間を費やし、その間に延べ約3500人が従事。スタッフやキャストの宿泊や飲食のみならず、セットの資機材調達や施工も地元企業へ発注され、1億円以上の直接経済効果を生み出した。

「制作側が希望した〝セットが設営できる大空間〟を(神戸市が)持ち、提案できたことが大きかった」としている。

まず立地、過去の実績も評価

令和5年度に神戸フィルムオフィスが誘致・撮影支援でかかわり、直接経済効果が1千万円以上あった作品は「シティーハンター」を含め計8作品。映画「帰ってきた あぶない刑事(デカ)」、テレビドラマ「たとえあなたを忘れても」などだ。

ロケ地として神戸が選ばれる理由について、土屋課長は「まずはその立地が大前提」と言い切る。「コンパクトなエリアに海もあれば山もある。また、旧居留地のような街並みもあり、長距離移動をしなくてもさまざまなシーンが撮影できる」としている。

また、過去の実績から神戸を選ぶ業界関係者も少なくないと分析する。平成12年2月、日本初のフィルムコミッションが大阪で設立されたのに続き、神戸フィルムオフィスは同年9月に誕生。これまでに3700超の映像コンテンツを手掛けており、「これまでの実績で神戸を選んでくれる業界関係者のリピーターが多い」という。

神戸舞台のシナリオに助成も

さまざまな映像コンテンツの誘致・撮影支援を手掛け、成果を出している神戸フィルムオフィスだが、地域活性化の観点から課題もある。

それは「ロケ地は神戸だが、作品の舞台が神戸ではない作品も多い」(土屋課長)こと。舞台が神戸でなければ、作品のファンらによるいわゆる〝聖地巡礼〟など観光振興の動きにつながりにくいからだ。

そこで神戸が舞台の物語を生み出してもらおうと、同オフィスは令和4年度から「シナリオハンティング助成制度」をスタート。シナリオ作家を対象に、映画・ドラマなどを想定した神戸が舞台のシナリオ執筆を援助する。

具体的には、物語の企画イメージなどが採択されたシナリオ作家に神戸への交通費および宿泊費を助成し、神戸に滞在しながらオリジナルのシナリオを考案してもらう。助成上限はシナリオライター1人なら15万円、シナリオライターに加えて監督など複数人なら20万円。これまでに年間2~3人が採択されており、「神戸が舞台として登場する作品を増やしたい」と話している。

国も4年度から「海外制作会社による国内ロケ誘致等に係る支援」を開始し、海外制作会社による国内ロケ撮影などの制作費支援を実施している。

神戸フィルムオフィスはこの制度について、海外制作会社誘致を推進する上でのチャンスと位置付ける。「神戸が舞台の海外作品が増えれば、神戸でのインバウンド需要につながる」とみて、海外作品のロケ誘致・支援にも積極的に取り組みたいとしている。(香西広豊)

この記事の関連ニュース