Infoseek 楽天

「猫も人もハッピーで暮らせる島に」 一斉「TNR」大作戦で離島のノラ猫さんの命を守る ねこから目線。の現場から

産経ニュース 2025年1月25日 12時0分

ノラ猫・保護猫専門のお手伝い屋さんとして仕事をしていると、猫を通していろんな地域で暮らす方々とつながっていきます。人が暮らしていればそこには必ず猫がいて、地域それぞれの猫と人との関わりがあります。

今回は、離島でのTNR(ノラ猫さんに不妊手術をして元の場所に戻すこと)の様子をお伝えしたいと思います。舞台は兵庫県姫路市にある家島諸島の中の坊勢島(ぼうぜじま)。人口2千人弱(令和5年時点)、漁業が盛んで「漁師町」として知られています。

漁師の町には猫がつきものです。坊勢島にもノラ猫さんが多く、一部の住民や、釣りに訪れる方々にかわいがられていました。一方、じわじわと増えた糞尿被害のほか、猫さんが増えすぎたことで1匹に行きわたるご飯が少なくなったため、状態の悪いノラ猫さんが見受けられるなど、ノラ猫さんが問題視されるようにもなっていきました。

そこで、坊勢区会はノラ猫問題に取り組むスペイクリニック姫路(不妊手術を専門とする動物病院)の獣医師さんや、姫路市の動物管理センターの職員さんを島へ招き、対策について相談と検討を重ねました。そして、命を守りながらもゆるやかに猫さんの数を減らしていく取り組みとして、島をあげてノラ猫さんの適正管理をめざし、TNRを実施していくことが決まったそうです。

取り組みは5年12月から始まり、2回の一斉TNRで80匹のTNRが終わった後、6年10月に実施予定の3回目の一斉TNRに関し、ねこから目線。に打診がありました。依頼の内容は、警戒心が強く捕獲ができないノラ猫さんたちの捕獲と、新たにTNRの理解を得られた地域のノラ猫さんの一斉捕獲、そして、島には動物病院がないため、捕まえたノラ猫さんたちを姫路市内の動物病院まで搬送してほしいというものでした。

事前に地域おこし協力隊の職員さんが調査してくださった「猫マップ」を基に、用意する捕獲器の台数や段取りを決めていきます。当日は、朝に捕獲器などの道具類を貨物船に載せて送り、時間差で捕獲スタッフも島に渡りました。

島には車が通れない細い道や階段が多く、現場まで歩いていかねばなりません。10分ほど捕獲器を持って息を切らしながら階段道を上ったところで、目的の「ネコロニー」に到着。そっくりなキジトラさんが15匹ほどいる中、この中の4匹が今回のターゲットです!といわれたときはめまいがしかけました(無事4匹とも捕獲できました)。

手に持てる範囲の限られた道具、足場の悪いスペースでの捕獲作業は大変でしたが、区会さんと地域おこし協力隊さんのおかげで、24匹のノラ猫さんを捕獲することができました。翌朝、チャーター便で姫路港まで猫さんを運び、港からは車でクリニックへ搬送します。

クリニックではすぐに手術に取り掛かってくださり、夕方に全頭の手術が完了。術後しばらく病院で安静にした後、先生のOKを頂いてから再び島へと送り届けました。手術を終えたノラ猫さんたちは、区会さんたちが元の場所に戻し、「地域猫」として命を全うしてもらいます。

坊勢島では小さい子猫に関しては外に戻さず、保護をして里親募集も行ってきたそうです。市の助成金が出ない医療費は区会さんがサポートし、これまでに10匹の子猫を譲渡することができたそうです。

今回、コーディネーターの役割を務めてくださった地域おこし協力隊の阪井元子さんは、「まだまだ全島民の理解が得られたわけではなく、少しずつ理解をしてもらいながら進めている」といいます。「『猫が悪者にならないように』という思いを持って、同じ島に暮らすものとして、猫も人もハッピーに暮らせるようにしたい」と話していたのが印象的でした。

保護猫活動は各地で個人や団体のボランティアなどにより行われています。今月から、私が関わりのある団体さんの活動と、その団体が里親を募集している猫さんたちに会える「譲渡会」情報、団体さんの「イチ押しにゃんこ」を紹介します。

つかねこ動物愛護環境福祉事業部

拠点は兵庫県尼崎市ですが、市内での活動にとどまらず、能登半島の被災地へ現在も通い続け、残された猫のレスキューや、行方不明になってしまっている飼い猫の捜索依頼に対応し続けています。

「つかねこ」さんから

動物を扱う諸問題は、人間社会における環境福祉や問題と捉え、TNR活動や適正飼養、終生飼養の啓発活動、保護譲渡活動、ペット災害危機管理士の資格などを軸に、不幸な境遇の動物を根本から減らすことを目指しています。人にも動物にも優しい社会の実現を目標としています。動物愛護管理推進協議会委員として、行政の取り組みにも関与しています

イチ押しニャンコ「まめ」さん

能登半島地震の被災地で、90歳の優しいご夫婦に大切に飼われていたまめさん。しかし、地震で自宅が全壊した飼い主さんは仮設住宅へ移らざるを得なくなりました。ペット不可のためまめさんは納屋に避難させ、雪道の中、お世話に毎日通ってくれていたそうです。

しかし体力的な負担が大きく、まめさんと一緒に暮らせるめどがなかなか立たないため、「悲しいけれど、まめのことを第一に考えると保護してあげてほしい」と託されました。

まめさんの第二の猫生も幸せな日々になるように、里親さんを募集しています!

長毛、ミックス/メス/避妊手術済み/12~13歳

譲渡会情報

・2月2日(日)午後1~4時 譲渡会と、被災地でのペット救援活動の写真を展示する「つかねこ譲渡会&能登と猫展」@立花南生涯学習プラザ2階(兵庫県尼崎市栗山町2丁目25-28)

・16日(日)午後1~4時 「つかねこ譲渡会&能登と猫展」@同

3月15日(土)午前11時~午後5時 「ニャンズマーケット12」にて「能登と猫展」@京セラドーム大阪9階スカイホール(大阪市西区千代崎3丁目中2-1)=要入場券700円(前売りは500円)

・23日(日)午後1~4時 「つかねこ譲渡会&能登と猫展」@立花南生涯学習プラザ2階(兵庫県尼崎市栗山町2丁目25-28)

小池英梨子

立命館大学大学院応用人間科学研究科対人援助学領域修了。「ねこから目線株式会社」(大阪市)代表、「人もねこも一緒に支援プロジェクト」(NPO法人)代表。平成16年から猫の保護譲渡やTNR活動をスタート。大学院でノラ猫をテーマに「共生と共存社会のリアリティ」について研究し、29年に猫の多頭飼育崩壊など、ヒトの福祉と猫問題への並行支援が必要なケースに対応するため「人もねこも一緒に支援プロジェクト」を立ち上げる。30年に保護猫・ノラ猫専門のお手伝い屋さん「ねこから目線。」を設立。京都、福岡、沖縄にも拠点を置き、ライスワークもライフワークも猫にまみれている。

この記事の関連ニュース