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お手伝い+旅「おてつたび」=給料もらって観光 人手不足解消と魅力発信ダブル効果狙う

産経ニュース 2024年8月2日 8時0分

人手不足に悩む地方の事業者と、旅先で仕事を手伝いたい人をマッチングする「おてつたび」というサービスが今、若者に注目されている。東京のベンチャー企業が運営するこのサービスの利用者にリピーターが多いことに着目した香川県琴平町の5事業者は、運営会社と共同で地域ぐるみで募集するプロジェクトを始めた。「観光以上・移住未満の旅」。関係者らは、「地域外の人と出会い、琴平のファンづくりにつなげたい」と期待する。

地域の良さを知って

運営会社「おてつたび」(東京都)は平成30年7月に設立。旅先でお手伝いをしながら観光を楽しもうと登録する利用者は現在、5・5万人超にのぼる。

一方、各地域での受け入れ先となる登録事業者の数は今年6月末時点で累計1400。同社によると、47都道府県すべてに受け入れ先があり、うち約4割が宿泊事業者。また、農業でも短期・スポットの労働力のニーズが増えているという。

おてつたびは期間がリゾートバイトに比べて短く、平均10日程度。報酬は時給などで計算され、運営会社を通じて登録者に支払われる。収入面より新しい経験や地域との交流を求める傾向が強いそうだ。お手伝いという目的が加わることで、観光名所に乏しい地域へも全国から人が集まりやすくなるという。

一方、同社広報担当者は、受け入れ先としても「単に人手不足解消というよりは自分たちの地域の良さを知ってほしいという意識が強い」と説明。周辺の観光や飲食店利用など地域経済への貢献、関係人口の創出などの手応えもあるという。今回の琴平町5事業者との共同のプロジェクトについても「地域一体募集という新しい取り組みはありがたい」と歓迎する。

「外部の目」で魅力発信を

第1弾は6月17~30日に実施。「琴平おてつたび~何度も琴平を訪れたくなる旅~」と名付けられ、中野うどん学校やビール醸造所「呑象ブリューイング」など5事業者が参加し、7人が訪れた。

特定の場所で働かず移動しながら仕事を進めるデジタルノマドやリモートワーカー向けのホステル&コワーキングスペース「Kotori(コトリ)」は3人を受け入れ。お手伝いは、広報・情報発信と宿泊運営などの業務だ。コトリの担当者は「外部の目で施設や琴平の魅力を発信してもらおうと考えた」とする。3人は1日5時間の業務時間のほか、時間外や休日に体験した旅行期間中の経験をインターネットなどで発信した。

休日にはレンタカーで近隣の観音寺市にある天空の鳥居(高屋神社)や銭形砂絵、「日本のウユニ塩湖」とも称される三豊市の父母ケ浜を巡った人も。担当者は「琴平を拠点にして周辺の観光スポットを訪ねる観光をPRしたいので狙い通りの発信だった」と話す。

再び訪れたい地域に

参加した京都府の大学4年、秋田奈生美さん(21)は、大学で「ワークライフバランス」について学ぶなか、ノマドワーカーに関心を持ち、応募した。「京都で大学生として過ごしていては出会えなかった人、価値観とのご縁ができ、将来の働き方の候補の一つになった」。一方で、「人口減など地域課題の解決策を一緒に考えたのが面白かった。地域おこしのリアルな難しさを実感できた」とも話す。

また、神奈川県の大学4年生、山下久玲羽さん(21)はプラントベースフードを広める活動をする学生団体に所属。農業体験を希望していたが、「地域の魅力を発信する業務に直感的にひかれた」と応募した。「日帰りで回れる観光地のイメージだったが、地元の人から面白い場所を教えてもらい、何日あっても足りないという思いに変わった」と話した。

さらに、大阪府のイラストレーター兼グラフィックデザイナーとして個人で活動している岡尾望さん(29)は、ガイド・PR用ツール制作に取り組んだ。「好きな旅をしながら働くのもいいなあと考え、おてつたびを見つけた。制作はPCがあればどこでもできるので働くスタイルの参考にしたい」という。

旅を終えた3人は、それぞれ「琴平という土地、人が好きになり、再訪したい場所になった」とする。運営会社によると、登録利用者の中には、2拠点生活や移住、定住の事例もあり、再訪意向は8割以上にのぼるという。

琴平町でのプロジェクト第2弾は、8月5~23日に3事業者で実施される。(和田宏基)

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