関西で回転ずしチェーンなどを展開する「大起水産」(本社・堺市)が、京都産の本マグロ(クロマグロ)をブランド化するプロジェクトを進めている。鳥取県沖で捕獲した身の引き締まった天然マグロを丹後半島の伊根湾内で太らせ、脂ののった最高級品に。これを「京まぐろ」と名付け、京都市内につながる運搬ルートを「京まぐろ街道」と呼び、周知させたいという。街道沿いの名産品と合わせたキャンペーンも展開、地方創生の呼び水とする戦略だ。
「天然」+「養殖」
本マグロは「マグロの最高級品」として人気が高い。水産庁によると、令和5年度の京都府のクロマグロの漁獲量は約71トンで、関西では和歌山県と並んでトップ級だ。
丹後半島東端に位置する伊根湾(京都府伊根町)では約18年前から、捕獲した本マグロに餌を与えて太らせる「畜養」が行われるようになった。大半が関東に出荷されてきたが、歴史が浅いこともあって、知名度はいまひとつだったという。
伊根湾は水温の寒暖差が大きく、山に囲まれて風の影響が少なく畜養に好条件。マグロは温かいときにエサをよく食べ、寒いときに脂がよくのる。
マグロは回遊魚で、天然ものは、大きな海を動き回るので身が引き締まり、赤身が多い。一方、養殖ものは、いけすの中で泳ぐから運動量が少なく、体長20~30センチの幼魚のころからエサを与え、2~3年かけて育てるので脂ののりが良いとされる。
畜養は、沖合で80キロ級まで成長したものを捕獲。いけすごと曳航(えいこう)し、湾内で約4カ月かけて100キロ前後にまで太らせる。まさに天然と養殖の「おいしいとこ取り」だ。
地方創生の起爆剤に
大起水産は「引き締まった体にほど良く脂がのり、臭みはなく、もちもちした上質な味わいが楽しめる」と、畜養に着目。昭和50年、漁港で買い付ける「産地直送」の卸売業からスタートした。53年にはマグロ加工専門の会社も設立した。現在、年間1万本のマグロを販売している。
令和4年に「京まぐろ」として商標登録、販売を開始した。マグロ加工のプロの誇りにかけて、1本ごとに身を開き品質を確かめたうえで販売する。
細かな品質管理を行う理由について、創業者の佐伯保信会長は「かつてブランド化した鮮魚が売れすぎて、チェックせずに品質の劣るものを販売、評判を落とした事例を知っているから」と話す。
数量が限られるため、9月~翌年1月ぐらいの間で出荷される。今年は少しずれこんで11月1日、同社直営の販売店、回転ずしチェーンで「販売解禁」となった。
新型コロナウイルスの感染拡大した4年、観光産業が多大な影響を受けたこともあり、京まぐろのブランド化プロジェクトは「復興の一助になれば」と企画した。
佐伯会長は「京都生まれのマグロを周知させ、京都の歴史、文化に加え新たな魅力の一つとして世界に発信したい」と意気込む。
そして、その昔、行商人がサバを福井から京都に運んだ「鯖街道」にあやかって、伊根湾から京都までのルートを「京まぐろ街道」と名付けた。
11月10日には、京都縦貫自動車道の道の駅「京丹波 味夢の里」(京丹波町)で京まぐろの解体ショーを開催し、地元の名産品、黒豆の販売と合わせてイベントを盛り上げる。
京まぐろの味を知った人が産地を訪れ、街道沿いの地元も潤う。佐伯会長は「地方創生の起爆剤にしたい」と力を込めた。(安東義隆)