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「お盆」にまつわるおすすめ6冊 ジャンルは違えど日本人の魂に触れるトリビアがいっぱい 書店バックヤードから

産経ニュース 2024年8月25日 7時0分

1年に1度、あの世から帰ってくるご先祖さまの霊を迎える「お盆」。住宅事情から、昔のようなお供えが難しくなったり、「夏休み」として意識されたりしながらも、今も変わらず日本中で行われる行事です。今回は「お盆」をテーマに、行事の意味や、日本人の信仰心を感じられる本をご紹介いただきます。(司会は文化部、藤井沙織)

座談会メンバー

大橋崇博さん(流泉書房)/百々典孝さん(紀伊国屋書店梅田本店)/佐々木梓さん(ジュンク堂書店大阪本店)

行事に込められた意味

大橋 まず、お盆とは何なのかということで、『「和」の行事えほん 春と夏の巻』(高野紀子作/あすなろ書房)です。先祖の霊を迎えてまつる日本の風習と収穫感謝の行事に、仏教の行事が重なっていったものですよという説明があって、キュウリで作る「精霊馬」に花や野菜のお供え、盆踊りや送り火に込められた意味が書かれています。

百々 収穫の時期やから、昔は皆、野菜がいっぱい家にあったんやろね。花もその辺に生えてるし。

大橋 今となっては実際に行うには難しいものもあるけど、知識だけでも持っておけたらと思って。

藤井 「水の子」というお供えは知りませんでした。こう暑いと、腐らないように気をつけないと。佐々木さんは、盆踊りにフォーカスを当てた本です。

盆踊り大国・東京

佐々木 『東京盆踊り天国 踊る・めぐる・楽しむ』(佐藤智彦著/ヤマケイ新書)。東京って盆踊り大国らしいんです。葛飾に渋谷にと地域ごとに音頭があって、会社帰りにスーツで参加したり。「盆オドラー」の著者が、参加した盆踊りをセットリストとともに紹介しています。

藤井 初心者が参加するためのコツまで…踊りに行きたくなりますね。

佐々木 盆踊りの歴史も載っています。今ではお寺でやる昔ながらの盆踊りもあれば、DJがいて音楽イベントとなっているものもあるそうです。

藤井 お盆は地獄の釜の蓋もあくとき。もう一冊は、そうきましたか。

佐々木 『オニのサラリーマン じごくの盆やすみ』(富安陽子文、大島妙子絵/福音館書店)。「地獄カンパニー」に勤める赤鬼が主人公の絵本で、亡者がお盆で里帰りしている間に大掃除をする。針山の針を磨いたり、血の池地獄の栓を抜いたら底からいろいろ出てきたり。で、次の日はお休み。関西弁のぼやきがリアルです。

呵責はサービス業?

藤井 鬼の呵責も仕事なんだと思うと、妙に親近感を覚えますね。

佐々木 こうしてみると、サービス業ですよね。

藤井 サービス業(笑)。大橋さんのもう一冊には、泣く準備がいりそう。

大橋 皆大好き、ヨシタケシンスケさんの絵本『このあと どうしちゃおう』(ブロンズ新社)。お盆は、亡くなった人を思い出すときだと思って選びました。男の子がおじいちゃんの遺品からノートを見つける。そこには、死んでから生まれ変わるまでの予定や、天国にはこんな神様にいてほしいとかが、楽しそうに書いてある。

藤井 なんて優しさにあふれた天国。ところどころ、子供のような発想をするおじいちゃんですね。

大橋 でも男の子は、おじいちゃんは本当は死ぬのが怖かったんじゃないのかと考えたり、自分もノートを書こうとしたり。難しいお話が分かりやすく描かれ、大事なことに気づけるんじゃないかなって。

藤井 ラストの仕掛けがすてきです。

さすがエクスナレッジ!

藤井 さて、百々さんは変化球。『神社の解剖図鑑』(米澤貴紀著/エクスナレッジ)。お盆のテーマで神社とはいかに。

佐々木 年末から新年に売れる本ですよね。

百々 お盆について考えてみたら、ご先祖さまのことを、日本人のことをあまりに知らない。ということで、神社を調べたら分かるかなと。鳥居や社殿、こま犬の形に込められた意味が図解されていて、神話で活躍した神様と神社の関係や、信仰の歴史も分かる。

藤井 絵で建造物が解説されていますが、写真よりも分かりやすい。

百々 そう、さすがエクスナレッジ! もう一冊もエクスナレッジ。柳田国男が岩手県の伝承なんかを聞いてまとめた「遠野物語」は、文体が古くて読みにくい。その弱点をなくしたのが、『関西弁で読む遠野物語』(柳田国男著、畑中章宏訳、スケラッコ絵)!

大橋 本当にエクスナレッジが好きですね!

百々 神様や妖怪が出てくる話や、平安時代の合戦の名残の話もある。昔の人はこういうことを感じていたんやなと。さっきの本と同じように、日本人の魂の在り方みたいなものが分かるかなと思いました。

藤井 古いお話がずっと語り継がれていたというのは、改めてすごいです。

百々 娯楽がないから、皆が誰かに面白い話を聞きたがって、自分も周りに話したがったんやろね。

大橋 関西なら最後に、「知らんけど」ってつきそうやね。

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