静岡県焼津市の令和6年度のふるさと納税寄付受け入れ額が、昨年12月末の時点で100億円を突破した。地元の主力産業である海産物やその加工品などの返礼品が人気を集めており、100億円超えは2年連続となる。過去最高だった5年度の約106億8千万円を既に上回り、記録更新も確実。焼津市は増えた歳入を産業振興や経済活性化に投入し、ふるさと納税を契機とした〝焼津式〟の地方創生に挑戦している。
物価高の影響? ツナ缶人気
「返礼品はマグロやカツオ、その他海産物の加工品などが7割、酒類なども人気があり、最近は物価高の影響かツナ缶なども増えてきました」。焼津市ふるさと納税課の山下浩一課長は、好調な寄付受け入れ状況を説明する。寄付受け入れ額は5年度が約106億8600万円で、県内トップ、全国でも8位に入った。さらに6年度はそれを上回り、12月末時点の速報値で約108億1200万円に達した。
市役所からも眼下には国内屈指の規模、水揚げを誇る焼津港や海産物の保管、加工施設などが見下ろせる。街中にも、海産物の販売や加工を手掛ける店舗や事業所が多い。まさに市が掲げる「さかなのまち」。特産品が持つ魅力が、ふるさと納税獲得の原動力となっている。
そのインパクトは大きい。5年度の市税収入が約210億円だったのに対して、寄付受け入れ額から返礼品の費用や必要経費、他自治体への流出額などを差し引いた額は約50億円で市税収入の2割超に匹敵する大きさだ。
返礼品1750品目に
魅力のある特産品があるというだけでは、100億円を超える寄付金は集まらない。同じく海産物が豊かな隣接の静岡市の5年度の寄付金額は約15億4800万円となり、他自治体への流出額などを差し引いた額は約23億円の〝赤字〟だった。昨年にタレントの勝俣州和さんに「静岡市ふるさと納税応援大使」を委嘱してPR強化を進め、6年度の寄付金額は12月時点の速報値で約23億円となったが、焼津市の背中は遠い。
焼津市は多くの時間と労力をかけてきた。「平成26年ごろから、職員が魅力ある産品を手掛ける事業者を訪ね、ふるさと納税について説明してまわった」(山下課長)。返礼品の提供体制は充実し、現在、270社の計1750品目が用意されている。提供者の間ではより人気が得られるように工夫する〝慣習〟が定着しており、例えば、ネギトロをカップに1食分ずつ小分けして薬味などを加えたものがある。
市も伝票の発行手続きなどを迅速化し、寄付受け入れから早いものでは2週間、遅くとも5週間以内には返礼品が発送できる態勢となっている。こうした積み重ねによって、26年度は約2億8000万円だった寄付受け入れ額は、令和2年度から安定的に50億円を超えるようになり、5年度に初の100億円突破を実現した。
体験型の充実は慎重に検討
最近は地域の名産品などの〝モノ〟に加え、地域での活動や体験といった〝コト〟にも人気が出始めている。市は旅行や体験提供の返礼品も用意しているが、ラインアップ充実については慎重に検討する姿勢をみせる。旅行先として選んでもらうための魅力的なコンテンツの創出にはハードルがあり、「まずは返礼品として提供される海産物をきっかけに旅行にきてもらえるようにしたい」(同)という。
実際に焼津市を訪れると、海産物の鮮度と価格の安さに驚かされる。市内の観光ホテルなどには、40年ほど前に自噴した天然温泉が供給されている。市は寄付受け入れ額を「産業振興」と「市のプロモーション」のきっかけづくりに最大限活用していく考えだ。その取り組みが県内の他自治体からも注目されている。(青山博美)