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三笘薫ら海外で活躍の選手を指導…川崎退団で注目される鬼木達監督の「進路」

産経ニュース 2024年11月20日 8時0分

サッカーのJリーグで当代随一の実績を誇る名将の決断に注目が集まっている。J1制覇4度などの黄金期を築いた川崎を今季限りで退団する鬼木達監督の今後の「進路」だ。3年連続でJ1優勝を逃した責任を取った形でも、Jリーグ史上最強ともいわれるチームを作り上げた手腕に疑問の余地はない。自身は監督業の継続に意欲をみせており、プロ選手としてのキャリアをスタートさせた鹿島の新監督就任が有力視されている。新天地でも再び覇権を争うことになりそうだ。

日本代表の強化にも貢献

鬼木監督の指導者としての経歴は輝かしい。2017年から8シーズンに渡って川崎を率い、J1を4度、天皇杯を2度、YBCルヴァン・カップを1度制した。とりわけJ1で26勝5分け3敗だった20年、28勝8分け2敗だった21年の2年間は、他クラブを寄せ付けずに連覇を達成。「J1史上最強」の称号にふさわしいことを示した。

勝っただけではない。4-3-3の基本布陣で決定力のあるセンターFWと個人で局面を打開できる両ウイングを擁し、中盤と両サイドバックも積極的に攻め上がるスタイルは美しかった。守備もさぼらない。ボールを失ったらすぐに人数をかけて奪い返して押し込み続けるのは、世界的な強豪の多くにみられる最先端の戦い方だった。

日本代表の強化にも大きく貢献した。10月15日に行われた26年ワールドカップ(W杯)北中米3カ国大会アジア最終予選のオーストラリア戦には、鬼木監督の薫陶を受けた海外クラブ所属選手5人が先発。三笘薫(ブライトン)や守田英正(スポルティング)らは、現代表で不可欠な戦力となっている。

「エネルギーがあるうちは次を」

これだけの逸材たちが世界へと羽ばたいていったのだから、川崎が弱体化しても仕方がない面がある。

J1で存在感を示せなかった昨季は14勝8分け12敗で8位、今季は35試合を終えて11勝12分け12敗で14位。主力として黄金期を支えた39歳のGK鄭成龍や38歳のMF家長昭博、37歳のFW小林悠らも大ベテランの域に入った。一時代に終わりを告げるのは鬼木監督にとっても、川崎にとってもいいタイミングなのかもしれない。

ただ、川崎のサポーターは喪失感を隠せない。スタンドには「川崎の宝 鬼木達」と記された横断幕などが掲げられ、キックオフ前のチーム紹介で鬼木監督の名前がコールされると温かく大きな拍手が巻き起こった。直近2シーズンの低迷を非難する雰囲気はなく、シルバーコレクターと揶揄(やゆ)されたチームを王者へ押し上げた感謝の念であふれている。

鬼木監督は50歳。老け込むには早く、本人も「エネルギーがあるうちは次を考えたい」と監督業の続行を示唆している。Jリーグはもちろん、海外のクラブを率いる姿をみたいと思うファンは多いだろう。育成年代を含めた日本代表という選択肢もある。

いずれにしても、川崎をJリーグ史に残る強豪に育て上げたように、新天地でもサッカーファンを楽しませるチームを作り上げてくれるに違いない。(奥山次郎)

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