16歳の若さで一度、引退した米国の〝天才少女〟が、銀盤に戻ってきた。19歳のアリサ・リュウは、9日まで東京・国立代々木競技場で行われたフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦、NHK杯に出場し、4位に入賞した。取材に応じたリュウは、氷上からいったん退いた理由や、現役復帰のきっかけが他競技の「スキー」だったことなどを明かした。
16歳でいったん「引退」
9日のフリーを終えたリュウの演技に対し、会場は温かい拍手に包まれた。
ショートプログラム(SP)は4位、フリーとの合計でも4位となった。楽しみにしていたという日本での試合を終えた19歳は「お客さんのサポートが力になった」と笑顔で振り返った。
今季に復帰したばかりで、GPは3季ぶりの参戦だった。第2戦のスケートカナダとNHK杯の計2戦に出場。「2回も(GPに)出られるなんて思っていなかった。たくさんの選手と戦えてモチベーションになった」。その言葉からは、心の底から楽しんで演技した充実感が感じられた。
起伏に富んだスケート人生を歩んできた。2019年1月、全米選手権を13歳の史上最年少で制覇。同年の国際大会のフリーで、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)と高難度の4回転ルッツの両方を成功させた。しかし、22年北京冬季五輪は7位に終わり、表彰台には届かなかった。銅メダルを獲得した同年3月の世界選手権を最後に現役から退いた。
16歳でいったん競技から離れた理由を「1回目のスケート人生で自分のやりたいと思っていたことは達成できた」と話す。大学進学の時期と重なったこともあり、「人生を一番楽しみたい、辞めるのにベストなタイミングだった」という。
現在は、カリフォルニア大ロサンゼルス校で心理学を学んでいる。「高校はホームスクールだったので、クラスメートがいなかった。大学では、周りに友達がいて、とても楽しい」と声を弾ませた。
スケートと似ていた「感覚」
競技復帰のきっかけは偶然だった。今年に入り、スキーに行ったことが契機だという。
「スケートと(感覚が)似ていて、楽しかった。もう一度氷上に乗ってみようかなと思ってリンクに行ったところ、すごく楽しかった」
競技を退いてからは一度も氷に乗らなかったというが、2週間に一度、リンクに通うようになり、「今に至っている」と説明。復帰は自身にとっても予想外で「全くプランしていなかったこと」と明かした。
ジャンプを跳ぶことすらままならなかったところから再びスタートし、現在は練習も楽しんでいるという。演技のプログラムをさらに磨いていきたいとし、「一つ一つの技術を向上させ、自信を持って試合に臨めるようにしたい」と意気込む。
今後、何年間スケートを続けるかについては「何年かは決めていないが、毎年こなして、次のシーズンも続けていけたら」。かつて世界を沸かせた天才少女が、2回目のスケート人生では、どんな姿を見せてくれるだろうか。(運動部 久保まりな)