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V奪回へ緊急補強に動いた巨人と動かぬ阪神 球団は連覇へ心血注ぐ岡田監督を後方支援せよ 「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

産経ニュース 2024年7月2日 11時30分

大激怒連発の岡田彰布監督(66)に対し、ひたすら静観?の阪神球団。両者のギャップをどう理解すればいいのでしょう。阪神は6月30日のヤクルト戦(神宮)で4点リードから逆転負け。2カ月連続の負け越し(5月=10勝13敗1分け、6月=9勝12敗1分け)で、4位に転落しました。「連覇しかない」と意気込んで臨んだ今季、折り返し点の過ぎた73試合で34勝34敗5分けです。当然ながら!?指揮官のイライラは募るばかりですが、4年ぶりのV奪回に向けてシーズン突入後も次々と戦力補強を敢行する巨人に比べ、阪神球団に補強の動きはなし。これは現有戦力への自信の裏返しなのか、それとも…。とても気になるコントラストです。

4点差逆転負けに激怒

沸騰した湯気が頭から立ち上っているかのようでした。4点リードを八回に一気に逆転され、九回の反撃機は無謀?な本塁突入でゲームセット。神宮球場の三塁側スタンド前を歩いて引き揚げていく岡田監督の姿を見て、16年前を思い出してしまいました。あの時は引き分けに終わった後、同じ場所を歩いて帰っていると、スタンドのファンから強烈なヤジ。反応した指揮官は「お前、誰に言うとんねん。降りてこんかい!」と感情をむき出しにしていました。

その年、2008年は87試合目に優勝マジックを点灯させましたが、終盤戦に主力選手が次々と故障で離脱。巨人に大逆転を喫して2位に終わり、岡田監督は引責辞任しました。先に触れた神宮球場のシーンは追い詰められたシーズン終盤での一コマです。まるで歴史は繰り返される…ような怒りの姿。これは大爆発があるなと思ったら、予想通りでした。直後の報道陣の囲み取材で感情があらわになったのです。

怒りの矛先はコーチ陣へ

6月30日のヤクルト戦は5-1でリードした八回、リリーフの桐敷が2死一、二塁から村上に適時打を浴びて3点差になると、指揮官はブルペンに目をやりました。打者サンタナのところでゲラ投入へ…。ところが、ブルペンで投げていたのは漆原だけ。ゲラも岩崎も投球練習をしていませんでした。

「サンタナからゲラ行くつもりやったけど、びっくりしたわ。漆原1人で。あそこで漆原は酷やで。漆原なんか投げさすつもりなかったよ。ゲラと岩崎がやってないんやから。投げさせられへんやないか。なんで準備せえへんのやろうな」

試合後、怒りをあらわにした指揮官。仕方なく漆原を投入すると傷口は一気に広がり、最後は急遽(きゅうきょ)マウンドに送った岩崎が勝ち越し打を浴びて逆転を許したのです。

そして、今度は5-6の九回2死一塁で佐藤輝が左翼越え二塁打を放ちましたが、一塁走者の植田がホームを狙いタッチアウト。啞然茫然のゲームセットに、岡田監督の怒りの矛先はグルグルと手を回していた藤本三塁コーチャーに。「信じられへんわ。ええっ?て思った。二、三塁でええんちゃうの? 左投手(ヤクルト・田口)で(次が)きょう2本タイムリー打ってる打者(梅野)で」とまくし立てたのです。

「きょうの負けはめちゃくちゃ大きいよ、ハッキリ言うて。そんな簡単な一つの負けちゃうで。大変な負けやで、こんなん」と怒りが収まらない指揮官は、顔をこわばらせて帰途に就きました。

遠慮会釈なく

令和6年。今の時代でここまで熱く、容赦なく、選手やコーチを叱り飛ばす監督は岡田監督しかいないでしょう。5月14日の中日戦(豊橋)でも、痛恨エラーの佐藤輝を「あれで負けた。あれで終わりよ」と叱責し、次の日には2軍降格。6月22日のDeNA戦(甲子園)では、4打数無安打3三振に終わった近本が「選択ミス」という談話を残すと、「選択ミスってどういう意味やねん。洗濯は白くなるもんや」と〝突っ込み〟。コーチにわざわざ真意を聴取させ、27日の中日戦(甲子園)から2試合スタメンを外しました。

客観的に見るならば、もう少し発言に気を付けて、自分の言葉が周囲にどのように受け取られるのかを考えた方がいいのでは…と思う人はいるでしょう。ボロクソに言われたコーチや選手の心情を考えるならば、敗軍の将、兵を語らずの方が得策ではないか-と思うのは当然です。しかし、古くから岡田監督を知る人たちの見方は違いますね。

「岡田監督はものすごい負けず嫌い。勝ってハシャギ、負けてむちゃくちゃ悔しがる。なので自然と腹の中で思ったことを口に出すんや。野球小僧がそのまま大人になったような人なんや」とある野球関係者は話し、こう続けました。

「今年は特に感情があらわになるシーンが多い。それはそれだけ連覇を絶対にしたいと思っているからや。阪神球団初のリーグ連覇を達成し、新たな歴史を切り開きたいという思いがむちゃ強いんやな。だから言葉にも遠慮会釈はないんや」

球団本部の仕事

なるほど、そういう捉え方をするならば、選手やコーチ陣に叱責の雨を降らせる心情は分からなくはありません。それほど今季のリーグ優勝に賭けている熱量の大きさの裏返しといえるわけです。

そうであるならば、気になるのは阪神球団の誠に静かな姿勢です。阪神球団は「世界に冠たる球団本部制」を敷いたその時から、戦力を整えるのは球団本部、監督たるフィールドマネジャーは球団本部が与えた戦力を自由に使い、優勝を目指す-という役割を打ち出しています。つまり戦力整備は監督の仕事ではなく球団本部の仕事です。

今季に4シーズンぶりのV奪回を目指す巨人はどうでしょう。5月上旬には前レンジャーズ3Aのエリエ・ヘルナンデス外野手(29)を獲得。ヘルナンデスは攻守に存在感を発揮し、3番センターを担っています。さらに新外国人選手として前ロッキーズ3Aのココ・モンテス内野手(27)も獲得寸前。西武とのトレードでは松原聖弥外野手(29)を放出し、若林楽人外野手(26)を獲得しました。これでもか…と阿部監督をバックアップしています。

助っ人外国人不在

逆に阪神はどうでしょうか。現在、1軍にはノイジーもミエセスもいません。外国人パワー0%でチーム打率2割2分1厘、29本塁打はいずれもリーグワースト(6月30日現在)。点が取れないから投手陣にしわ寄せが来て、試合終盤に苦しくなる。指揮官はいらだちを隠せず、言葉もきつくなる。球団に岡田監督の連覇への思いと同等な気持ちがあるならば、もっと機敏に動くのが当たり前だと思いますが、どうでしょう。

新外国人野手を獲得するのか、1軍昇格のチャンスがなかなか得られない2軍の投手を駒にしてトレードで野手を狙うのか。打線の強化はマストで必要と思うのですが、現時点で動きはサッパリです。

もう今年は無理せんとこ…なんてまさか思ってませんよね。2年契約の岡田監督の任期は今季までです。トレードや新外国人選手の獲得期限は7月31日までですね。静観の球団は今、何を思う…ですね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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