「春の高校バレー」として行われる第77回全日本バレーボール高等学校選手権大会(産経新聞社など主催)が来年1月5日に開幕する。女子は特に最強世代ともいわれる選手が終結。東九州龍谷(大分)の忠願寺(ちゅうがんじ)姉妹もその代表格だ。妹の莉桜(りおん)=1年=と姉の風來(かえら)=3年=が、姉妹で挑む春高バレーは今回が最初で最後。莉桜は「苦しいときに思い浮かぶのはお姉ちゃん。一緒に戦いたい」と力を込める。
全日本選手権でも健闘
全日本選手権で1回戦に登場した東九州龍谷高には取材陣が殺到した。その中心が、元Vリーガーを父に持つ、忠願寺風來、莉桜姉妹だった。
風來はこの大会まで主将を務め、チームを牽引(けんいん)。初戦でSVリーグのアランマーレ山形に1-3で敗れたが、第2セットは25-16で奪う健闘。エースの莉桜が高いブロックをかいくぐって連続スパイクを決める場面もあり、相原昇監督は「自信がついた試合になった」と目を細めた。
成長著しい莉桜
東九州龍谷高は春高バレーとしては2008~10年までの選抜大会と合わせて5連覇を果たした全国屈指の名門校。今夏の全国高校総体は3位。単独チームで臨んだ国民スポーツ大会は初戦敗退で涙をのんだが、春高バレーは優勝候補の一角となる。
エースは妹の莉桜。身長181センチで、最高到達点297センチのサウスポー。世代ナンバーワンといわれ、U18女子日本代表に名を連ねる。相原監督は「勝負どころでも落ち着き、やるべきことをやっている。考え方も含めて、バランスがいい。最高の選手になると思う」と感心しきりだ。
全日本選手権のアランマーレ山形戦で、第1セットは相手の徹底マークに動けなかったが、第2セットは一変。莉桜は「(普段から)目の前のブロックの高さより、もっと高いブロックがきたと想定して打つことを意識している。そう思ったら、選択肢が広がり、もっと強気でいけた」と言ってのけ、即座に冷静な状況判断と対応ができる能力を示した。
刺激を与える姉の風來
一方、風來は卒業後、SVリーグのAstemoリヴァーレ茨城入団が内定。キャプテンシーの強さはだれもが認めるところだが、春高バレーは「自分のことでもっとのびのびやってほしい」(相原監督)との思いから、主将を梶山葵にバトンタッチして臨む。
風來について、莉桜は「(チーム内で)一番必死で、みんなにも厳しくできる。お姉ちゃんのために、という思いはだれよりも強い。その気持ちを持つと自分も火が付くし、頑張ろうと思える」と話す。
風來は国スポ後、主将として毎日ミーティングを続けてきた。「チーム的にも危機感、緊張感をもって練習できている」と手応えを口にする風來。春高バレーへは「(試合でコートに立つ)3年生が少ない分、3年生の思いを背負って戦っていきたい」と意気込む。
東九州龍谷は大会2日目の1月6日、国学院栃木と岩美(鳥取)の勝者と対戦する。「一番の実力を試す場所」と莉桜。姉妹で臨む最初で最後の春高バレーは、まもなく始まる。(嶋田知加子)
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今大会には注目選手が多く出場する。2012年ロンドン五輪銅メダリストの大友(旧姓)愛さんの長女で共栄学園(東京第3)のエース秋本美空(みく)をはじめ、金蘭(大阪第2)には大森咲愛(さえ)、西村美波、平野シアラ、馬場柚希。古川学園(宮城)の工藤光莉(ひかり)、前回大会MVPの就実(岡山)の福村心優美(こゆみ)、ミャンマーの元バレーボール代表選手を父に持つ下北沢成徳(東京第1)のイェーモンミャら…。大会屈指の熱戦となりそうだ。