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「トップを狙う」…大阪ハーフマラソンで「ミスター駅伝」40歳・岡本直己がラストラン

産経ニュース 2025年1月21日 11時0分

1月26日に開催される「2025大阪ハーフマラソン」(産経新聞社など主催、奥村組協賛)で、長距離界の〝最長老〟が競技の第一線から退く。中国電力陸上部の岡本直己(40)。加齢とともに、最近は故障がちで「これ以上の競技力向上が望めない」と引退を決意したが、ラストランの冬の浪速路では「勝ちにいく」と意気込む。

通算100人抜きも

今月15日、広島県坂町の中電坂スポーツ施設。球技場と陸上競技場を囲む形のランニングコースを黙々と走るベテランの姿があった。1キロ3分を切るペース。本番を見据えた調整に余念がなかった。

厚底シューズの登場もあり、近年は30代後半の選手が存在感を発揮するのも珍しくない男子長距離界だが、40歳まで一線で活躍するのはまれだ。「(40歳近くになっても)試合に出ると走れてしまうのでまだやめるわけにはいかんな、と」

鳥取・由良育英高(現・鳥取中央育英高)から明治大を経て、平成19年に中電入り。チームが拠点を置く広島で行われる都道府県対抗駅伝に歴代最多19回の出走を誇り、31年には大会初の通算100人抜きを達成した。

令和4年2月には大阪・びわ湖毎日マラソンで2時間8分4秒の自己新記録をマーク。東京五輪代表を争った元年に続き、パリ五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」にも39歳で果敢に挑んだ。

元日の全日本実業団対抗駅伝も実力でメンバー入りを勝ち取った。もっとも、6区で区間33位と振るわず。引退はすでに決めていたが、「競技人生の中で一番ひどい走りだった」と受け止める。

直前の調整にミスが生じた。気温が低かったのに、「自分が安心したいからか、無理に仕上げてしまった」。それでも、本番でもっと走れていただろう過去と比べ、「フィジカル面での余力が残っていない」と感じた。

駅伝では、「とにかく『外さない』(期待通りに応える)男」(山崎亮平マネジャー)だったが、「前回(令和6年)の実業団駅伝を含め、得意の駅伝でチームに迷惑を掛けるようになった」(岡本)。自らに引導を渡した理由の一つだという。

「トップ狙う走り見てほしい」

「もともとそれほどの選手じゃなかった」と、ランナー人生を謙遜気味に振り返る。「高校のときの全国大会は予選落ち。箱根駅伝でも目立ったタイムを出していないですから。でも、ここまで来られた。周りに支えられ、あがき続けた結果です」

大きな目標だった五輪出場と実業団対抗駅伝優勝はかなわなかったが、最後の情熱を大阪ハーフにぶつける。マラソンの中でもハーフでの優勝経験は唯一ない(4年の大阪ハーフは1時間1分25秒で4位)。「前で勝負したいですね。厳しいとは思いますが、優勝できれば」と、ラストランでの色気も捨てていない。

冬の浪速路は例年、沿道に幾重もの観戦者が集まる。「がむしゃらにやってきたので、最後まで気持ちを切らさずにトップを狙う走りを見てほしいですね。何度もくじけましたが、あきらめなかったから、この年までやれたんで」。感謝と恩返しの走りを誓った。(矢田幸己)

取材を終えて 今後は社業に専念するという。自ら「とがってきた」と表現するように、「走ること」を極限まで突き詰め、向き合ってきた。その過程でほかのことを犠牲にもした。「本当にいろいろな常識とかを知らないんですよ」。勝利や結果を求められるアスリートゆえのジレンマだが、自身を客観視できる岡本選手だからこそ、後輩をはじめ多くの人に慕われるのだろう。指導者としてキャリアを歩む姿もいずれ見たい。

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