日本の女子バスケットボール界を牽引(けんいん)してきた193センチが健在ぶりを示した。15日に東京・代々木第二体育館で閉幕した皇后杯全日本選手権。今季加入したアイシンを初めて決勝に導いた渡嘉敷来夢(33)は21得点10リバウンドの活躍で、昨季のWリーグを制した富士通を大いに苦しめた。新天地で存在感を存分に示した33歳は、2028年ロサンゼルス五輪への出場を視界にとらえている。
チームの歴史塗り替える活躍
決勝では開始早々、ゴール下からチーム初得点を決めると、直後にコーナーから3点シュートを射抜き、前半だけで15得点した。リードして迎えた後半は、厳しいマークや連戦の疲れもあってか得点は思うように伸びず、チームは55-65で逆転負け。「めちゃくちゃ悔しい。勝てるゲームだった」と唇をかんだ。
それでも大会ベスト5にふさわしい活躍をみせた。12日の準々決勝ではチーム総得点の半分の30得点を稼いで前回4強のシャンソン化粧品を破り、過去最高がベスト8だったチームの歴史を塗り替えた。
14日のトヨタ自動車との準決勝では40分間フル出場し、再びチーム総得点の半分に当たる29得点。しかも残り35秒で同点のシュートを決めた後、残り3秒で放ったシュートのリバウンドを自らもぎ取って勝ち越し点を奪う千両役者ぶりだった。
パリ五輪では代表から落選
愛知・桜花学園高在学時から日本代表候補に名を連ね、2010年に入団したジャパンエナジー(現ENEOS)でも1年目から主力として活躍。米プロWNBAでもプレーし、16年リオデジャネイロ五輪では日本の8強入りに貢献した。
だが、日本が銀メダルを獲得した21年東京五輪はけがの影響で出場を逃し、パリ五輪代表からも落選。昨季はENEOS入団以降初めて無冠に終わり、シーズン後に退団した。
33歳の誕生日を迎えた今年6月11日、発表されたのはアイシンへの入団。高校時代からの盟友、岡本彩也花とともに、常勝軍団を離れ、昨季Wリーグ8位のチームを新天地に選んだ。
2028年ロス五輪出場に意欲
今季から2部制になったWリーグで、1部プレミアに所属するアイシンは5勝11敗。8チーム中7位と苦しんでいる。全日本選手権での躍進は、来年1月11日に再開されるリーグでの巻き返しに向けた好材料だ。
「(全日本選手権ファイナルラウンド会場の)代々木に入ってからENEOSのときより、いいパフォーマンスができている。オフェンスのバリエーションが増え、仲間も自分を生かしてくれる」と渡嘉敷。周囲との連係向上を含め、手応えを口にする。
実は全日本の決勝は、個人として15年連続で歩みを進めてきた舞台。準々決勝で右膝前十字靱帯(じんたい)断裂の重傷を負った20年大会も、ベンチから声を張り上げて仲間を鼓舞した。決勝でデンソーに11連覇を阻まれた前回の銀メダルは悔しさのあまり「飾りもしなかった」というが、今回は「自分の第2章の始まりのメダル。しっかりと飾って、この気持ちを忘れずにやっていきたい。この負けで自分もチームも強くなる」と言葉に力を込める。
28年ロサンゼルス五輪出場にも意欲を示す33歳のベテランは、新天地でもう一花咲かせるつもりでいる。(運動部 奥村信哉)