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WEリーグの閉塞感を印象付けた高田春奈チェア退任、求められるトップ交代にとどまらない改革

産経ニュース 2024年10月1日 8時0分

女子プロサッカーリーグ・WEリーグの閉塞感を印象付けるリーダー交代だった。2022年に就任した高田春奈チェア(47)が9月26日、任期満了に伴い1期2年で退任。リーグの注目度を上げられなかった責任を取った形で、「私の不徳の致すところ」と頭を下げた。日本女子サッカー界を覆う沈滞ムードを振り払うにはトップ交代にとどまらない改革が求められ、新チェアに就任したJリーグの野々村芳和チェアマン(52)を中心とした新執行部も、難しいかじ取りを迫られそうだ。

9月18日にオンラインで取材に応じた高田氏は、「リーグの価値をもっと早く上げられれば、現状は変わっていたかもしれない。露出や発信が課題だったのは間違いない。リーグの認知度を上げられなかった」と率直に認めた。一方、就任直後の22~23年を「基盤づくり」、23~24年を「種まき」、9月に新シーズンが開幕した24~25年を「勝負の年」と位置付けていただけに、勝負をかける直前の退任には「いろいろな思いはある」と複雑な胸中ものぞかせた。

高田氏も認識するように、日本初の女子プロサッカーリーグとして21年秋に産声を上げたWEリーグは思うように注目度を上げられていない。平均観客数は21~22年が1560人、22~23年が1401人、23~24年が1723人と低水準で推移。日本サッカー協会の佐々木則夫女子委員長がリーグ発足準備段階だった20年に目標に掲げた「初年度は5千人、10年構想で1万人」には、遠く及んでいない。

クラブ側はリーグのリーダーシップに不満を抱いていたとみられる。高田氏は退任に至る詳細な経緯について言及を避けつつ、「リーグとクラブ側の考えが違ったのかもしれない」と方向性にずれがあったことを示唆した。社長としてJ2長崎の経営を担った経験もあり、「クラブ経営に正解はなく、個性があってしかるべし。集客は基本的にクラブの力」との言葉は〝恨み節〟とも取れた。

立ちはだかる問題の多くは、WEリーグだけで解決できそうにない。日本女子サッカー界は、幼少期にサッカーと触れ合えても中学生年代以降にプレー機会が激減するという長年の課題を克服できていない。女子代表「なでしこジャパン」による11年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会制覇の偉業が、21年東京五輪、23年W杯オーストラリア・ニュージーランド大会、24年パリ五輪と3大会連続主要国際大会ベスト8という奮闘の過小評価につながっているのも皮肉だ。高田氏でなくても頭を抱えてしまう問題ばかりといえる。

WEリーグは、野々村チェア、新副理事長の宮本恒靖・日本協会会長ら新執行部で再スタートを切った。高田氏は欧州女子サッカー界急成長の背景に各国・地域協会や男子リーグのサポートがあった点を指摘し、「Jリーグや日本協会は大きな力になる」と期待を寄せた。

前途は多難だ。しかし、女子サッカーの発展に伴うサッカー文化の醸成が男子を含む日本サッカー界全体に与える波及効果は大きく、一丸となってWEリーグ繁栄を目指す必要がありそうだ。(運動部 奥山次郎)

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