サッカーの2026年ワールドカップ(W杯)北中米3カ国大会への出場権を争うアジア最終予選のため、インドネシアに乗り込んだ日本代表がフィーバーを巻き起こした。11月15日のインドネシア戦は6万人超のサポーターで埋まり、練習には日本の報道陣を凌駕する数の現地メディアが殺到。もともとサッカー人気の高いお国柄で欧州サッカーへの造詣も深く、ほとんどが欧州でプレーする日本人選手に対する関心の高さが招いた現象だったようだ。
日本の報道陣を上回る取材申請
日本の練習が不思議な雰囲気に包まれていた。
11月13日に試合会場付近のグラウンドで行われた練習には、日本の報道陣を上回る現地メディアが駆け付けた。インドネシア代表が同日の練習を非公開とした影響もあったようで、取材申請を受け付けた日本サッカー協会の広報担当者は「日本人の2倍ぐらいは来ているのではないでしょうか」と説明した。
グラウンド外には、日本人とともにインドネシア人のファンも集まっていた。練習は見学できない。できるのは、練習前後にバスとグラウンドを往復するわずかな間に選手をみて声をかけるぐらい。そのために選手が到着する前から待ち、約2時間後にバスへ戻る選手が現れるのを待つ。敵地で行われたアジア最終予選のバーレーン戦やサウジアラビア戦では見かけなかった光景だった。
14日に行われた日本の公式会見を取材していた現地ネットメディアの男性記者に事情を尋ねてみた。真っ先に挙げた理由は、同国でのサッカー人気だ。男性記者は「サッカーはインドネシアで最も人気があるスポーツ」とした上で「欧州サッカー、とりわけイングランド・プレミアリーグの人気は高く、遠藤航(リバプール)や三笘薫(ブライトン)、今回は不在だった冨安健洋(アーセナル)らはサッカーファンなら誰でも知っている」と話してくれた。
日本の選手も驚き
日本の選手にもインパクトを与えた。
長友佑都(FC東京)は入国時の空港に駆け付けたメディアやファンの姿に、「夜中の2時ごろに着いたのに、10台ぐらいのテレビカメラやファンが集まっていた。サッカー熱が高くてうらやましい」と驚きを隠さない。久保建英(レアル・ソシエダード)も「サッカーの人気があってうらやましい」と声をそろえた。
似た光景として思い浮かんだのは、2年前にフランス1部パリ・サリジェルマンが行った日本ツアーだ。アルゼンチン代表のリオネル・メッシ、ブラジル代表のネイマール、フランス代表のキリアン・エムバペというスーパースターがそろい踏みだった強豪がJリーグ勢と対戦した親善試合はもちろん、有料で一般公開された練習にもファンが大挙して訪れた。
インドネシアにおける日本人選手の立ち位置は、日本におけるメッシやネイマール、エムバペらのそれに似ているのだろう。日本にいると、本当の意味では理解しにくい欧州の強豪でプレーする日本人選手の価値。サッカー新興国のメディアやファンを色めき立たせるのを目の当たりにし、欧州で存在感を増す選手が引っ張る日本がアジア最終予選で首位を独走する理由の一つを痛感させられた。(奥山次郎)