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酒井宏樹ら実力者3人離脱のJ1浦和、世代交代は閉塞感打破への妙手となるか

産経ニュース 2024年7月8日 11時0分

サッカーのJ1浦和が大きく変わろうとしている。アジア王者にも輝いた近年のクラブを支えた元日本代表のDF酒井宏樹(34)ら実力者3人が、6月に相次いで移籍のためにチームを離脱。それぞれがピッチ内外で大事な役割を担っていただけに、影響は必至だ。一方で、チームには楽しみな若手有望株もいる。3人の退団が契機となり、一気に世代交代が進むかもしれない。

浦和は6月24日に酒井、28日にDFアレクサンダー・ショルツ(31)の海外クラブ移籍準備に伴うチーム離脱、27日にMF岩尾憲(36)のJ2徳島への移籍を発表した。

酒井はチームのキャプテン、ショルツは副キャプテンだった。ピッチでは185センチの大型サイドバックである酒井が、ビルドアップに苦しんだ際にロングボールの第一ターゲットとして奮闘。ショルツは積極的な持ち上がりで攻撃にアクセントをつけていたほか、PKのキッカーも任されていた。

岩尾も経験豊富なボランチとしてチームに落ち着きをもたらすだけでなく、高精度のプレースキッカーとして好機を演出。3人は昨年4月30日と5月6日にアルヒラル(サウジアラビア)と対戦したアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝の2試合に先発して優勝に貢献した功労者でもある。コンディション不良などもあって出場機会を減らしつつあったとはいえ、一斉退団は驚きを持って受け止められた。

6月30日の磐田戦後、ショルツとセンターバックでコンビを組んできたマリウス・ホイブラーテンは「寂しいけど、これがフットボール。誰か1人ではなく、みんながベストを尽くしていくしかない」とコメント。1得点2アシストで3-0の勝利に導き、翌7月1日に新キャプテン就任が発表された伊藤敦樹も「リーダー的存在が一気に抜けてしまった」と喪失感を隠さなかった。

とりわけ日本人屈指のサイドバックである酒井と、昨季のJ1ベスト11だったショルツが抜けた穴は大きく、選手層は心許なくなった。ただ、酒井とショルツについては、故障離脱時からともに25歳の石原広教と佐藤瑶大がそれぞれカバー。岩尾が抜けた中盤では青森山田高時代から将来を嘱望されてきた22歳の武田英寿が、6月22日の鹿島戦でJ1初ゴールを含む2得点を挙げるなど、飛躍の兆しをみせつつある。

近年の浦和は昨年のACLを含めて散発的にカップ戦でタイトルを獲得してきたものの、主戦場のJ1ではなかなか優勝争いに絡めずにいる。酒井らの存在がチームに安定感をもたらすのはいうまでもないが、年齢を考えてもチームを劇的に変えられるだけの伸びしろは望みにくいのも事実だ。

磐田戦では石原がプロ初得点となる先制点を奪い、佐藤はクリーンシート(無失点)に貢献。武田もトップ下や左ウイングで好機に絡み、伊藤は「若いヒデ(武田)たちが試合に出てうまくまとまれている」と、若手の台頭に手応えを口にした。大胆な世代交代は、閉塞感打破への妙手となるかもしれない。(運動部 奥山次郎)

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