来春行われる第97回選抜高校野球大会で大阪勢の出場が98年ぶりに途絶える可能性が出ている。出場校選考の重要な資料となる秋季近畿地区大会に出場した大阪の履正社、大阪桐蔭が初戦で敗れ、唯一、1勝した大院大高もベスト8止まり。近畿の一般選考枠は6。ベスト4は当確で、残り2校は準々決勝敗退組の比較になる。それぞれ有利、不利な要素はあり、過去に大阪勢がすべて初戦で姿を消しながら、「センター返しができる打線」が評価され、近大付が選抜出場を果たした例もあり、選考の行方が注目される。
大阪桐蔭「夏に向けて…」
ほっともっとフィールド神戸で行われた近畿大会は東洋大姫路(兵庫)が決勝で智弁和歌山を破って17年ぶりに優勝。大会を3連覇していた大阪桐蔭は1回戦で滋賀学園に敗れ、履正社とともにベスト8入りを逃した。打線がつながらず、逆転負けを喫した西谷監督は「力が足りないということ」とした上で「夏に向けてやっていきたい」と気持ちを切り替えていた。
ベスト4には天理(奈良)、市和歌山が名を連ねた。ここまでの4校はセンバツ出場確実で、残り2校は大院大高のほか、滋賀学園、滋賀短大付、立命館宇治(京都)の8強組から選ばれるのが通例だ。
滋賀大会で優勝し、大阪桐蔭を倒した滋賀学園が一歩リードとみられ、市和歌山にコールド負けした立命館宇治は厳しい状況。残り1枠は大院大高と滋賀短大付との比較になりそうだ。
大院大高は敗れた東洋大姫路が優勝したことは追い風といえる。東洋大姫路は今大会、初戦で9得点、準決勝の天理戦で11得点、決勝も5得点と高い攻撃力を示した中、大院大は4点に抑えたというのも好材料。一方の滋賀短大付は初戦で大阪1位の履正社を破っているのは大きい。ただ滋賀学園が選ばれた場合、地域性のバランスが大きな壁となってくるかもしれない。
さまざまな面から選考が行われ、大阪勢の出場がゼロとなった場合は第4回大会(1927年)以来、98年ぶりの「事件」だ。
100年の歴史で一度だけ
昭和になって初めて開催された第4回大会は大正天皇の崩御で、国民が喪に服するということで出場校は前回の半数のわずか8校。近畿からは関西学院中(兵庫)、和歌山中(現桐蔭高)が出場し、和歌山中が優勝した。大阪が出なかったのは、選抜高校野球の100年の歴史の中でこの大会だけとなっている。
ただ「大阪勢ゼロ」の危機は過去にもあった。中でも高校野球ファンの記憶に残っているのが2003年の第75回大会の選考だ。当時も近畿の出場枠は6。前年秋の近畿大会に大阪から近大付、東海大仰星(現東海大大阪仰星)、大産大付が出場したが、初戦で全滅した。選抜出場校は優勝した平安(京都=現龍谷大平安)、準優勝の智弁和歌山、ベスト4の東洋大姫路、斑鳩(奈良)はすんなり決まり、続いてベスト8の近江が高い攻撃力が評価されて選ばれた。そして最後の1枠には8強組の南部(和歌山)、育英(兵庫)などを押しのけ、初戦敗退の近大付が選ばれた。
その理由が「1回戦負けでも力がある」「センター返しのできる粘り強い打線を持つ」だった。一方で南部については九回に4失点して逆転負けした準々決勝を挙げて「もろさがある」とされた上、同県の智弁和歌山が選ばれていたことで「1県2校になるには説得力がない。地域性を考慮して近大付」となったのだ。これはファンの間では「センター返し選考」といわれ、大阪は絶対に選ばれる「大阪枠」があるのではとささやかれた。
「神宮大会枠」の行方は
1976年秋の近畿大会でも大鉄(現阪南大高)、浪商(現大体大浪商)はいずれも初戦で敗れたが、大鉄は選抜に出場した。今回、大院大高は近畿1勝を挙げており、過去に比べれば、大阪勢ゼロの「危険度」は低いとみられる。
近畿王者の東洋大姫路は20日に開幕する明治神宮大会に出場する。ここで優勝すれば、選抜の神宮大会枠1が近畿に与えられ、一般枠と合わせて7校出場となる。この場合、大院大高と滋賀短大付の両校が選ばれそうだ。
さらに文武両道、困難克服や野球以外での活動が評価される特別枠の21世紀枠にも注目だ。2枠あり、2001年のスタート以来、大阪のチームが選ばれたことはない。選抜大会は第1回大会以来、近畿からは必ず公立が選ばれているという伝統が続いている。今回は市和歌山が近畿4強に入り、途切れる心配はないが、過去、10、14、15年に近畿の一般選考枠がすべて私立になった際、21世紀枠で公立校を選び、連続出場は途切れなかった。今回、大阪からの21世紀枠の推薦校には伝統校の市岡が選ばれた。来月13日に各地区ごとの推薦校9校が決まる。
出場校を決める選考会は来年1月24日に開かれる。できるだけ多くの選手たちが納得できる結果を期待したい。(高校野球取材班)