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0勝→7勝 巨人のサウスポー井上温大が「勝てる投手」になった内海哲也コーチの教え

産経ニュース 2024年9月17日 8時0分

巨人の高卒5年目左腕、井上温大(はると)が飛躍のシーズンを送っている。6月から先発ローテーション入りし、ここまでキャリアハイの7勝をマーク。昨季は2軍で防御率0・75と圧倒的な成績を残しながら1軍で未勝利に終わった23歳が、〝勝てる投手〟への階段を上がっている。

4試合に登板し、防御率10・95と苦しんだ昨季のような姿はない。救援から始まった今シーズン。2番手で上がった5月30日のソフトバンク戦で4回無失点と好投すると、6月6日のロッテ戦からローテーション入り。以後12試合に先発し、防御率は救援も含めて2・97と安定した成績を残している。

何が変わったのか。井上自身は持ち味でもある直球の制球力が上がったことをポイントに挙げる。「ツーシームとフォークが決まるようになった。ストレートを低めに投げられているから、打者も同じ高さに来たフォークを振るのかなと思います」。

春季キャンプは2軍スタート。1軍で先発のチャンスをもらった4月20日の広島戦では4回4失点と振るわず、春先は決して状態がいいとはいえなかった。転機になったのは、巨人の左腕エースとして一時代を築いた内海哲也投手コーチから広島戦後に受けたある提案だった。

「どういう風に体を使ったらインコース、アウトコースに投げられるのか。キャッチボール感覚でいいから、傾斜を使った練習を毎日やってみよう」

それまでマウンドの傾斜を意識した練習は、週1、2回のブルペン投球だけ。それを、マウンドの傾斜を再現する器具などを使い、毎日の練習に取り入れるようにした。

試合に近い条件で球を操れるようになれば、おのずと試合での制球も安定する。「あれをずっと毎日やるって決めてから、コントロールも良くなった」と井上。最近では「勝ち星が自信になって強気に行けるところはあります。ランナーが出てもどう打ち取るかを頭に入れて試合に臨めているので、バタバタせずに打者と勝負ができている」と、マウンドでのたたずまいに余裕も出てきた。

内海コーチにとって井上は、現役時代に自主トレも共にしたまな弟子のような存在だ。声をかけたのは制球力向上とは別に、もう一つ狙いがあった。

「芯が通ったものが全くなかったんですよ。今どきの子だから、いろんな情報があふれている中で、一つのことをずっとやり続けることができなかった。幹がない状態で、枝分かれの練習を取り入れても何の意味もないんです。だから調子が悪いときに立ち返る、原点のようなものを作ってほしかった」

プロの世界は抑えては、打たれてのいたちごっこ。その中で生き残るためには、自身の体を細部まで操り、繊細な変化を感じ取れるようにならないといけない。そんな思いもあって、地味で地道な練習を続けさせてきたという。

ともに汗を流していた頃は、「ただただかわいいだけだった」という弟分の飛躍に、内海コーチは「ようやくポテンシャルと結果が伴ってきているなという感じ」と目を細める。ただ、求めるものはもっと高い場所にある。「まだまだ。まだまだですよ。考え方も含めて、日々勉強しながら、与えられた試合で仕事が果たせるようにと温大も思っているだろうし、自分も全力でサポートしていきたいです」。

発展途上にある若きサウスポーには、6度のリーグ制覇と2度の日本一を支えた頼もしい師匠がついている。(運動部 川峯千尋)

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