米大リーグでも動向が注目されていたプロ野球ロッテの佐々木朗希投手(23)を巡り、球団がポスティングシステムによる米大リーグ移籍へ向けた手続きを開始することになった。佐々木の場合、現行の大リーグの労使協定ではマイナー契約しか結べないため、条件面での大型契約は望めない。今回の挑戦に対し、米メディアからは「(米国で)若くしてフリーエージェント(FA)になれば大金を得られる」とメリットを強調する声がある一方で、ほかのアマチュア選手への影響を懸念する声も挙がっている。
「ドジャース合意」の噂を否定
ロッテが米大リーグ挑戦を容認したことで、佐々木は今オフの移籍市場の中でも一気に注目を集める存在となった。大リーグ評論家の福島良一さんは「23歳という若さに加え、160キロ前後の直球など潜在能力の高さが評価されているのでは」と指摘する。
現在の労使協定では、25歳未満のドラフト対象外の外国人選手とはマイナー契約しか結べない「25歳ルール」の存在があり、契約も「国際ボーナスプール」の制限内で行うことが求められる。
当時23歳だった2017年に大谷翔平(現ドジャース)が米大リーグ挑戦を表明した際には、契約金約231万ドル(当時のレートで約2億6千万円)でエンゼルスと契約を結んだ。
米メディアでは、大谷や山本由伸が在籍するドジャースが最有力という見方が強い。しかし、佐々木の代理人を務めるジョエル・ウルフ氏は一部の米国メディアに対し、「ドジャースとすでに合意しているのでは」という噂に「スポーツマンシップに欠ける」と批判するなど真っ向から否定しており、交渉が解禁されれば複数球団が名乗りを上げることになりそうだ。
25歳なら「山本と同様の契約」
経済誌「フォーブス」(電子版)は「25歳の投手だった場合、佐々木は昨オフに12年総額3億2500万ドル(当時のレートで約465億円)のメジャー契約を結んだ山本と同様の契約を結んでいたはずだ」と指摘する。23歳での挑戦は、条件面を考えれば一見、早いようにも見える。
しかし、スポーツ専門局のESPN(電子版)は「メジャーに早く来ることには魅力的な理由がある。多額のスポンサー収入が得られるのと、7年後に若くしてFAになることで大谷のような大金を手に入れられる期待がある」とし、エンゼルス時代から多くの日米の企業とスポンサー契約を結んだ大谷を事例に挙げている。
米スポーツメディアの「ジ・アスレチック」は「佐々木が契約すると、他のアマチュア選手は苦しむことになる」といった見出しで記事を掲載。国際ボーナスプールで設定されている制限額の大部分が佐々木の契約で占められることで、中南米などほかのアマチュア選手の契約に影響が出る点を指摘した。
「今年までの5年間の総合的な判断として彼の想いを尊重することにした」などとコメントしている球団の後押しにより、夢だったメジャーのマウンドへ前進した佐々木。しかし、ポスティングシステムのあり方などを含め、右腕の挑戦による余波は今後もしばらく続きそうだ。(浅野英介)