Infoseek 楽天

マイナー契約なら開幕まで日給30ドル 異国で苦悩する「フジナミ」に阪神復帰を勧めたい 「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

産経ニュース 2024年12月3日 11時30分

野球人生の剣が峰に立たされている藤浪晋太郎投手(30)は、藤川阪神に復帰志願したらどうでしょう。米大リーグのウインターミーティングがテキサス州ダラスで8日から12日まで開催されますが、プエルトリコで行われているウインターリーグでも乱調(4試合に先発、11回⅔で10四球、4死球、5暴投)の続く藤浪は、メジャー契約にこぎ着けるにはほど遠い状況にあります。マイナー契約を締結したとしても、ギャランティーの支払いは開幕日以降で、来春2~3月は1日30ドル(約4500円)の手当だけの生活。開幕前にカットされれば路頭に迷う運命です。ならば育成契約でも、今オフに日本に戻ってきた方が得策では? 古巣は温かく迎えてくれるはずですよ。

大リーグのオフの祭典

もうすぐ米大リーグ恒例のオフの祭典、ウインターミーティングが開催されます。メジャーリーグ30チームおよびマイナーリーグの160を超すチームの球団幹部(オーナー、ゼネラルマネジャー、監督、スカウトなど)がテキサス州ダラスに集結し、来季以降のリーグ運営を話し合うとともに、各選手の去就なども直接話し合う場です。フリーエージェント(FA)となっている大物選手の動向も決まっていきます。今オフならば、ヤンキースからFAのファン・ソト外野手(26)がどの球団とどんな巨額条件で契約するかが最大の注目点ですね。

かつて、日本のプロ野球球団のフロント幹部や監督らがウインターミーティングに参加し、新外国人選手の獲得に向けて米球界関係者と接触していた時代もありました。取材する側からすれば、阪神や阪急(現オリックス)などの編成担当がどこの球団幹部と接触しているかによって、新外国人選手の情報が絞り込めました。なのでスポーツ紙各社はウインターミーティングに記者を派遣していた時代もあったのです。懐かしい話です。

プエルトリコでも制球難露呈

そんな祭典に先立ち、寂しくなる情報が海を越えて伝わってきました。プエルトリコで開催中のウインターリーグにカロリーナの一員として参加している藤浪が相変わらずの制球難で結果を出せていない-という内容です。同リーグでは4試合に先発。11回⅔を投げて10四球、4死球、5暴投で、防御率3・86と惨憺(さんたん)たる状況です。

代理人のスコット・ボラス氏は「フジは元気に投げている」と言い、メジャー30球団にリリーフ投手としての売り込みを行っている状況ですが、現状の結果ではとてもダラスのミーティングで「フジナミ」の名前が浮上する気配はありません。

藤浪は阪神から2022年オフにポスティングシステムで米大リーグ・アスレチックスに移籍。2年目の今季はメッツと年俸約5億円プラス出来高(金額は推定)で1年契約を結びましたが、開幕時にメジャー登録されないまま、3Aシラキュースへの降格が発表されました。5月中旬に一度はメジャー昇格するも、今度は右肩痛で故障者リスト入り。そのまま7月下旬にメジャー40人枠から外され、オフの11月1日に自由契約となりました。今季のマイナーでの成績は、33試合に登板して防御率5・94。それでも来季も米大リーグへの昇格を夢見て、プエルトリコでのウインターリーグに参加し、右腕を振っている状況です。

2つの選択肢

この先、藤浪の未来はどうなるのか? 同学年で高校時代からのライバルだった大谷翔平(ドジャース)が今や米大リーグのみならず、世界のスーパースターにのし上がった現状と比較すると、あまりにも大きな落差に愕然(がくぜん)としますが、それでも藤浪はまだ30歳。野球人生を諦めるには早すぎます。必死で食らいついていけば、光明の差す可能性はあります。

彼の前途には2つの選択肢があります。一つは米大リーグ復帰を目指す道。しかし、現状の成績ではメジャー契約の話はほど遠いでしょう。この2シーズンでメジャー30球団の首脳は藤浪の制球難を知り尽くしています。あるとしても現実的なのはマイナー契約。例えば1年5万~7万ドル(約750万~1050万円)の年俸で、来春2月からのマイナーのスプリングキャンプに参加し、メジャーを目指す道です。

しかし、マイナーにおける年俸の分割払いはシーズン開幕日以降となります。なのでスプリングキャンプに参加する2~3月は、1日30ドル(約4500円)の手当が支給されるだけですね。そして開幕前にカット(自由契約)されれば年俸は1円も支払われません。なので年俸5万~7万ドルという契約を仮に締結しても、それは絵にかいた餅となる可能性もあるのです。もし、3月上旬の1次カットで名前を呼ばれたら、その時点で路頭に迷うことになります。

もう一つの選択肢は今オフ、日本のプロ野球界に復帰すること。もちろんセ・パ12球団も米球界に渡って以降の成績や内容はすべて知っています。当然ながら、高年俸で獲得に乗り出す球団はどこもないでしょう。しかし、日本球界の誰もが藤浪のスキルの高さを知っています。160キロに迫る直球が投げられる右腕はそう国内にはいませんね。

そうした状況下、たとえば藤浪自身が古巣の阪神に復帰志願をしたら、どうでしょう。阪神ファンは今も藤浪をどこかで心配し、先行きをおもんぱかっているのです。藤浪自身が阪神球団に復帰をお願いしたならば、球団はむげな態度を取らないと思います。支配下がダメなら、育成契約でもいいじゃないですか。年俸600万円からスタートして、再び1億円プレーヤーを目指せばいいだけでしょう。

10シーズンで57勝

藤浪は地元・大阪の大阪桐蔭高で春夏連覇を達成したエースでした。4球団が競合した12年のドラフト会議で当時の和田豊監督が交渉権を獲得し、阪神に入団。ルーキーイヤーからの3シーズンは2ケタ勝利を飾りました。その後は竜頭蛇尾でしたが、それでも阪神では10シーズンで57勝54敗の数字を残しています。何とかもう一花を…と思う気持ちは当時を知る関係者なら、誰もが持っているのでは?

再び日本球界にかじを切ったとき、藤浪には新たなチャンスが芽生えるような気がします。現在の苦闘をその時の肥やしにしてほしいと願っています。どうですかね…。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

この記事の関連ニュース