用水路に転落した高齢女性(84)を発見し、父親とともに救助した滋賀県高島市立青柳小2年、酒井結都(ゆうと)君(8)が、滋賀県警高島署の民徳隆署長から感謝状を受け取った。日頃から人命救助にあたる自衛隊の活躍に関心を持っているといい、「助けることができてよかった」と笑顔をみせた。
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「助けて~」
暗闇の中から女性の声が聞こえた。近づくと、幅1メートルほどの用水路の中に人影が見えた。「幽霊?」「ヤバっ」。当初は驚きしかなかった。
9月21日夜、結都君は家族とともに自宅庭でバーベキューをしていた。飲み物を買いに50メートルほど離れた自動販売機に向かったそのときだった。確認すると水深20センチほどの用水路に女性がしゃがみ込んで、助けを求めていた。
1人で救助は無理と判断し、父親の勝史(かつふみ)さん(43)を呼び、2人で女性を引き上げた。女性は額から血を流していた。全力で自宅に戻り、110番するための携帯電話と椅子を持って戻った。
女性は手首を骨折していたが命に別条はなかった。
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「震災現場や災害現場で活躍する自衛隊のテレビ番組が好きで、よく見ている。本当に自衛隊が好きで、当日も日中は自衛隊(陸上自衛隊今津駐屯地)のイベントに行っていた」と母親の明美さん(47)。3人きょうだいの末っ子で、怖いもの知らずの面はあるが、リーダーシップもあり、頼もしい。今回の人命救助も「結都ならという期待はあった」といい、目を細める。
勝史さんも「110番するための携帯電話といい、女性を座らせる椅子といい、自分で判断した。『こんなことまでできるようになったんだ』という思いだ」と目尻を下げる。そして、「これからも、いろんなことがあるだろうが、優しく、正義感あふれる人に育ってほしい」と願う。
当初は取材に緊張した様子だった結都君。半時間もすると署長室のソファでくつろいでいた。(野瀬吉信)