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岸和田だんじり祭開幕 「動」の岸和田地区、「静」の春木地区、2地区の対照的な祭りでだんじり文化底上げ

産経ニュース 2024年9月14日 19時56分

大阪府岸和田市の伝統行事「岸和田だんじり祭」が14日、始まった。華やかなだんじりで知られる祭りは「旧市」と呼ばれる市中心部の岸和田地区のほか、北部の住宅街、春木地区でも開かれる。祭りを代表する華やかな旧市での曳行と、地味ながら地域密着の春木地区の曳行。2つの「祭り」がだんじり文化を形作ってきた。

祭り初日の14日、春木地区では「ソーリャ、ソーリャ」の威勢のよいかけ声とともに、だんじりが駆け抜けた。コースの多くは住宅街。のどかな風景が広がるが、観衆のすぐ目の前を通る迫力は圧巻だ。

「各町自慢のだんじりを曳いている誇りは、他の地域と変わりない」。春木地区での祭りを取り仕切る「春木地車祭礼年番」の野口忠範年番長は胸を張る。

毎年9月半ばの週末に行われる岸和田だんじり祭は「9月祭礼」とも呼ばれ、岸和田、春木の2地区で計34台のだんじりが参加。岸和田地区の22台は中心部の南海岸和田駅周辺で曳行し、春木地区の12台は約6キロ北の南海春木駅周辺で曳行する。

江戸中期の元禄16(1703)年に起源をもつ岸和田だんじり祭。岸和田城下のお祭りとして始まった経緯から、城のお膝元の岸和田地区で開かれてきた。

春木地区では大正時代、2台のだんじりが曳行されていたという。戦後、だんじりが売却されるなどして地区内での曳行は途絶えたが、高度成長期の住宅開発による人口増で復活していき、昭和45年に地区で祭礼を取りまとめる年番が組織された。このころから、岸和田地区との「9月祭礼」として行われるようになったという。

祭礼研究が専門で自身も春木地区に住む同志社大の石田信博名誉教授は「かつて岸和田城下までだんじりを曳いていたことがあり、その縁で岸和田地区との開催になったようだ」と話す。

石田さんによると、岸和田地区は伝統を重んじながらも観客を意識し華やかさや派手さを加えて進化。法被をそろえたり、豪快に角を曲がる「やりまわし」の所作を洗練させるなど「見せる」ことを意識した。

一方、住宅街の春木地区は、昭和の終わりごろまで道が狭くて周回コースを設けられず、だんじりのサイズは岸和田地区よりやや小ぶりだった。岸和田地区のように有料の観覧席もなく「地味な印象」(石田さん)。ただ「その分、地域密着」という。春木地区の年番長を務めたこともある石田さんは「小さな町でも大きな町でも自分の祭りが一番という熱い思いを持っている」と強調する。

平成に入ってから道路が拡張され、だんじりも岸和田地区並みの大きさになった。石田さんは「対照的な2つの祭りが同時に行われていることで幅広いだんじり文化をつくっている」と話す。

岸和田地区でつくる「岸和田地車祭礼年番」の久礼英樹年番長は「岸和田地区は別格と思っている。祭りの継続へ子供たちに魅力を伝えていきたい」とし、春木地区の野口年番長は「若い世代は岸和田地区の華やかさにひかれるが、祭りへの思いは春木地区も変わらない。地域の祭礼として守っていきたい」と話している。(藤谷茂樹)

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