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滋賀・高島と京阪神の交流盛んに 住民待望の開業、暮らしは一変 湖西線開通50周年㊤

産経ニュース 2024年7月16日 18時0分

「湖西線は今年で開通50年。車窓からの絶景を望みながら快適な鉄道の旅をお楽しみください」。JR湖西線の車内で流れる声の主は、滋賀ふるさと観光大使で歌手の西川貴教さんだ。

湖西の動脈といわれる湖西線は昭和44年に廃線となった江若(こうじゃく)鉄道(浜大津―近江今津)に代わる路線として、49年7月20日に開通。山科(京都市山科区)―近江塩津(滋賀県長浜市)間の74・1キロを結ぶ。全線高架式のため、踏切がないのが特徴。高速走行が可能で、関西と北陸を結ぶ特急「サンダーバード」は最速130キロで走る。

線路東側に雄大な琵琶湖の景色が広がる風光明媚(めいび)な路線で、ファンも多い。

湖西線といえば、強風による運転取りやめをイメージする人も多い。線路西側に連なる比良山系から吹き下ろす「比良おろし」が原因で、過去には貨物列車が横転する事故もあった。

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湖西線の開通を最も待ちわびていたのは、高島市の人だったかもしれない。

江若鉄道が廃線になってから湖西線が開通するまでの約5年間は代行バスが運行されたが、アクセスがいいとは言い難かった。湖西線が誕生したことで、近江今津以北に駅が新設され、京阪神への移動時間は短縮した。

滋賀県高島市今津町の橋本源之助さん(79)は、50年前の開通の日の様子を覚えている。当時、町立今津東小6年の担任だった橋本さんは、児童を引率して近江今津駅(同町)のホームで開かれた式典に参加した。

ホームには「湖西線開業 安曇川へ8分 堅田へ42分 西大津へ58分 京都へ73分」と書かれた横断幕が掲出され、くす玉が割られたほか、テープカットも行われるなどお祝いムード一色に包まれた。

「とにかくすごい盛り上がりで、ホームが人でごった返していた。児童が線路に落ちないように、そればかり気にしていた」と橋本さんは振り返る。

一番電車を見送ると、近隣の学校の吹奏楽のメンバーや鼓笛隊が駅前や商店街をパレード。夜は小学校の体育館で演奏会が行われるなど、町をあげての大イベントとなった。

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その湖西線開通から50年を迎える。

高島市は従来、文化的にも距離的にも、福井県の若狭町や小浜市などと近かったが、湖西線開通を機に一変した。

「京阪神が近くなったという感覚があった。通勤、通学圏が一気に広がった」と橋本さん。他方で、京阪神方面から水泳客やスキー客が多く訪れるようにもなった。

鉄道関連の著書があり、滋賀県内の鉄道事情に詳しい大津市歴史博物館の木津勝副館長は「京阪神から北陸を結ぶバイパスの誕生により、特に湖西北側の人にとっては交通利便性が格段に向上した。それだけに路線に対する思い入れも強いのではないか」と話している。

湖西線は北陸から京都、大阪を結ぶ路線として湖西地域に住む人たちの生活の足となり、沿線の発展に大きく貢献した。半世紀にわたり人を運び、文化を育み続けてきた湖西線と沿線の歴史を振り返る。

■湖西線の主な出来事

昭和44年10月 江若鉄道が営業運転終了

昭和49年 7月 湖西線が開通

昭和62年 4月 国鉄分割民営化、JR発足

昭和63年12月 小野駅が開業

平成 6年 9月 叡山駅が比叡山坂本駅に改称

平成20年 3月 西大津駅が大津京駅に改称

平成20年 3月 雄琴駅がおごと温泉駅に改称

令和 6年 7月 湖西線の開通50周年

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