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高速度運転事故、一般感覚では「暴走」でも… 遺族署名活動、訴因変更も

産経ニュース 2024年11月13日 20時48分

危険運転致死傷罪の在り方を検討する法務省の検討会で13日、同罪の要件見直しを提案する報告書のたたき台が示された。検討会で焦点の一つとなったのは、高速度運転による事故だった。一般感覚では「暴走」と思えるような事案でも、同罪に問えないケースが相次いできた。

「加速する感覚を楽しんでいた」。時速約194キロで乗用車を運転し右折車と衝突、男性会社員=当時(50)=を死亡させたとする危険運転致死罪に問われた被告(23)は、12日の大分地裁での被告人質問で、大幅な速度超過の理由をこう語った。

5日に裁判員裁判が始まるまで紆余(うよ)曲折があった。この事故で大分地検が当初適用したのは過失致死罪。危険運転に訴因変更されたのは、被害者遺族が署名活動を行い、厳罰を求めた後だった。

宇都宮市で昨年2月、時速160キロ超の車がバイクに追突した死亡事故でも、宇都宮地検はいったん過失致死罪で起訴。遺族が要望書や署名を提出し、今年10月に危険運転致死罪への訴因変更が認められた。

高速度運転の要件は、「進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」。過去の裁判例をみると、制御困難か否かを判断する上で重視されるのは、カーブや勾配、凹凸といった道路状況。比較的ハンドル操作が容易な直線道路では、いくらスピードが出ていても「制御困難」を立証しにくく、適用のハードルが高くなるとされる。大分、宇都宮の両現場もほぼ直線だった。

令和2年、福井市内で飲酒運転の車がパトカーの追跡を逃れようと直線道路で時速約105キロまで加速した上、交差点に進入した2人死傷事故でも、福井地裁は「走路がぶれることなく一貫して直進していた」として、過失致死傷罪などを適用し、確定した。

この日に検討会で示されたたたき台では、高速度運転について、法定速度を一定以上超えた運転を危険運転として処罰する新類型を設ける案を提示。飲酒運転については危険運転と判断できるアルコールなどの数値基準を明記するよう求めた。

ほかに、タイヤを滑らせて曲がるドリフト走行などによる事故も新たに対象とする案を示した。

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