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「心もてあそんだ」 紀州のドン・ファン元妻、検察と弁護側争う 論告求刑公判詳報

産経ニュース 2024年7月6日 7時0分

「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん=当時(77)=に対する殺人罪などで起訴された元妻の須藤早貴被告(28)が、19歳だった平成27~28年、別の男性=当時(61)=から現金計約2980万円をだまし取ったとして詐欺罪に問われた事件の裁判は5日、和歌山地裁で結審した。検察側が懲役4年6月を求刑したのに対し、被告は結審前に最後に与えられる発言の機会で「被害男性の証言は明らかに一部噓。噓を見落とすことなく判決を下してほしいと思います」と述べ、詐欺罪での立件について改めて不満をにじませた。

被告側は、勤務するキャバクラの客として出会った男性から、海外留学やモデルとのトラブル解決といった噓の名目で金を受け取ったことは認めており、男性が噓を信じ、だまされていたか否かが争点。被告は「噓だと分かった上で、私の体をもてあそぶためにお金を払った」と訴えている。

好意や親切心に付け込む

この日はまず検察側が論告を行い、詐欺罪が成立する根拠として、金の振込後のメールのやり取りを挙げた。

「振り込んだからな~きっちり終わらせなさい」「モデルの問題は(男性の)おかげですべて片付きました。ほんとにほんとにありがとう」

男性が28年1月、被告が美容コンテストでモデルの髪を傷めたトラブルに対する慰謝料などの名目で、1174万円超を振り込んだ直後のメール。こうしたやりとりから、だまし、だまされていたことは明らかで、「話を信じた」という男性の証言は信用できるとした。

その上で、事件は男性の好意や親切心に付け込む巧妙な犯行だと指摘。2人の間で身体接触があったとしても、被告自身が法廷で「もうちょっと押せばやれるんじゃないかと希望を持てるぐらいの触り加減」を男性に許していたなどと証言したことを踏まえると、被告が体をもてあそばれたとはいえず、むしろ「被告が被害者の心をもてあそんだ」と非難した。

〝破廉恥〟な本音隠すため

一方で、男性の証言は「信用できない」と主張したのが弁護側だ。

男性は遺産で多額の「あぶく銭」を手にしたことで、詐欺として立件された金のほかにも、専門学校の学費、タワーマンションの家賃、「お手当やお小遣い」などを被告に渡し、カラオケで体を触っていた-。当時こうした状況があったと説明し、「いつか性行為をできるという思いで金を渡していた」という〝破廉恥〟な本音を隠すために、「美容師になる」という夢を純粋に応援し、被告を信じ切ったという噓をついたと強調した。

「詐欺罪の成立が立証されていない」と結論付けた弁護側。主張が通らず、もし有罪となる場合でも、量刑では被告が当時未成年だったことを考慮すべきだとして、最後にこう訴えた。

「高校を卒業してすぐキャバクラで働き、61歳の男性に体を求められる。こうした子供は罰するのではなく、保護するのが社会の責任じゃないんですか」

判決は9月2日に言い渡される。

被告は30年2月に「紀州のドン・ファン」と呼ばれた野崎さんと結婚。しかし、野崎さんは同年5月に自宅で死亡した。和歌山地検は令和3年5月、殺意を持って致死量の覚醒剤を野崎さんに摂取させて殺害したとする殺人罪などで被告を起訴した。この殺人事件の公判期日は未定。

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