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17年前の加古川女児刺殺「自白」が突破口 再逮捕の容疑者の供述、客観状況と矛盾せず

産経ニュース 2024年11月27日 22時27分

誰が、なぜ、幼い女の子の命を奪ったのか。何も分からないまま17年もの月日が流れた事件が大きく動き出した。兵庫県警が27日、殺人容疑で勝田州彦容疑者(45)を逮捕した同県加古川市の女児刺殺事件。人通りの少ない場所での一瞬の犯行に、捜査は早い段階で暗礁に乗り上げた。別の女児襲撃事件などを機に勝田容疑者が捜査線上に浮かんでからも、決め手がないまま時間が過ぎたが、任意聴取での容疑者の供述が捜査を急展開させた。

「非常に難しい捜査」

「客観証拠が非常に乏しく、被疑者の特定、犯行の立証が非常に難しい捜査を強いられた」

この日、捜査本部のある加古川署で記者会見した県警捜査1課の柱谷昌彦課長は、捜査が長期化した理由をこう語った。

事件が起きたのは、平成19年10月16日午後6時すぎのことだった。自宅近くの公園で友達と遊んでいた小学2年の女児=当時(7)=が、自転車で1人で帰宅。自宅裏に自転車を止め、玄関に回って家に入るところを襲われたとみられる。

悲鳴を聞いた家族が119番。女児は病院に搬送される途中、「大人の男にたたかれた」という趣旨の言葉を残したとされる。だが、ごく短時間の犯行で有力な目撃情報はなく、防犯カメラが普及していない当時、犯人特定に結びつく映像も見つからなかった。

部外者が立ち寄らないような場所での発生といった状況などから、県警内には顔見知りによる犯行との見方も出たが、捜査は難航。県警は延べ約5万4千人の捜査員を投入し、チラシ配りなどで情報を募ったが、手がかりは得られなかった。

「10年間ほど浮上したまま」

膠着(こうちゃく)状態の中、県警が解決への糸口とみたのが、同種事件の前歴者ら不審者情報の洗い出しだった。特に捜査員らの目を引いたのは、27年5月に同県姫路市で起きた中3女子生徒刺傷事件。現場周辺の防犯カメラの映像などから逮捕されたのが、勝田容疑者だった。

県警はこれ以前にも、不審者の一人として勝田容疑者の存在を把握していたが、「姫路の事件で加古川事件も間違いないのではないかという心証を抱いた」と元捜査幹部は振り返る。

ただ、聴取の結果は否認。ポリグラフ検査まで実施したが明確な反応は得られなかった。追及の突破口となるような物証もなく「10年間ほど浮上したままになっていた」(元捜査幹部)という。

転機となったのは平成30年。岡山県警が別の女児刺殺事件で勝田容疑者を逮捕した。加古川事件同様、凶器が未発見など物証に乏しい事件だったが、捜査段階の自白を客観的な状況と丹念に照合していく手法で立証し、有罪が確定した。

兵庫県警は審理の行方を見届け、今年5月から改めて任意聴取を重ねた。取調官が繰り返し被害者の苦しみなどを語りかけると、勝田容疑者は自供するようになったという。

詳細に語られる犯行時の様子は、遺体の傷の状況などと矛盾せず、県警は自供内容は信用できると判断。一方、岡山の事件では公判で否認に転じたことを踏まえ、容疑者が犯人ではない可能性をつぶす「シロの捜査」にも注力した。

逮捕にはこぎ着けたが、難しい立証を迫られる状況に変わりはない。柱谷課長は「事件の全容解明に向け、引き続き捜査を進める」と語った。(安田麻姫)

現場周辺からは安堵と解明を望む声

勝田州彦容疑者の逮捕を受け、長年にわたり犯人の影におびえてきた現場周辺の住民からは、安堵の思いや真相解明を望む声が聞かれた。

「容疑者が捕まって本当に良かった」。兵庫県加古川市の現場近くに住む女性(70)はこう話し、安心した表情を浮かべた。被害女児が事件直前まで遊んでいた公園にはよく散歩で訪れ、女児が遊ぶ姿を何度も見かけていた。「天国で喜んでいると思う」。女性はそう言って、女児をしのんだ。

女児の家族と交流があるという同市の40代女性は、勝田容疑者について「(女児の)未来を奪ったのに17年間も黙っていたのは許せない」と怒りをあらわにし、「裁判で事件の真相が明らかになってほしい」と話した。

事件当時、勝田容疑者は現場から約4キロ離れたところに住んでいた。容疑者は平成27年の同県姫路市の事件で逮捕されて以降、勾留が続き、同居していた両親も数年前に他界。容疑者宅は今は空き家となっている。

過去の事件の公判では、女児の腹部からの出血に性的興奮を覚えるといった性癖を明かされていた勝田容疑者。近所に住む男性(84)は、「活発な印象は受けなかった」と幼少期を振り返り、「女児を手にかけるような男が近所に住んでいたのか」と声を震わせた。

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