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「捜査機関の不当な働きかけ」言及、福井中3殺害事件で再審開始決定 証言の信用性否定

産経ニュース 2024年10月23日 10時33分

福井市で昭和61年、中学3年の女子生徒=当時(15)=が殺害された事件で懲役7年の判決が確定し、服役した前川彰司さん(59)が裁判のやり直しを求めた第2次再審請求審で、名古屋高裁金沢支部(山田耕司裁判長)は23日、再審開始を決定した。

前川さんは一貫して否認。前川さんが犯人だと示す直接的な物証はなく、「事件直後に血の付いた服を着た前川さんを見た」「犯行を打ち明けられた」といった複数の知人の証言が有罪の根拠とされた。

決定理由で、山田裁判長は、この知人証言について「捜査に行き詰まった捜査機関が、誘導などの不当な働きがけを行って形成された疑いが払拭できない」と信用性を否定した。

ただ、これらの証言の信用性を巡っては司法判断が揺れ動いた。通常審の1審福井地裁で無罪判決、第1次再審請求審の高裁金沢支部で再審開始決定が出たが、いずれもその後に覆っている。

今回の再審請求審では知人の1人が有罪の根拠となった証言を翻し、「事件の日に前川さんを見ていない」と証言。この内容は初期の供述調書とも同じで、「福井県警の捜査員に自身の覚醒剤事件を見逃してもらう見返りに記憶と異なる証言をした」と説明した。

また弁護側は、ほかの知人らの証言と食い違う再現実験結果や、証言の一部が事実と異なることを示す、新たに開示された複数の捜査資料なども「新証拠」として提出。改めて各証言が「信用できない」と訴えていた。

確定判決によると、女子生徒は昭和61年3月19日夜、福井市の市営団地で1人で留守番をしていた際に、顔や首を多数回刺されるなどして殺害された。

約7カ月後、覚醒剤事件などで逮捕、勾留中で前川さんとは知人だった当時暴力団組員の男性が、「事件直後の前川さんを見た」などと証言したことをきっかけに、県警が62年3月、21歳だった前川さんを逮捕した。

福井地裁は平成2年9月、知人らの証言が重要部分で変遷し「信用できない」として無罪を宣告したが、名古屋高裁金沢支部は7年2月、一転して「証言は大筋で一貫している」と認定。シンナー乱用による心神耗弱状態だったとして懲役7年を言い渡し、その後確定した。前川さんは15年3月に満期出所した。

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