「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん=当時(77)=に致死量の覚醒剤を飲ませて殺害したとして殺人罪などに問われた元妻、須藤早貴被告(28)の裁判員裁判の論告求刑公判が18日、和歌山地裁で開かれた。検察側が無期懲役を求刑したのに対し、弁護側は改めて無罪を主張。被告は最終意見陳述で「ちゃんと証拠を見て判断していただきたいです。よろしくお願いします」と述べて結審した。
被告と犯行を結びつける直接的な証拠はなく、間接証拠で犯人性を立証できるかが争点。判決は12月12日。
検察側は論告で、被告が「老人 完全犯罪」などと検索し、野崎さんが死亡する前月には覚醒剤の密売人と接触したと指摘。犯行時間帯に野崎さんと自宅で2人きりで、この間、野崎さんの遺体が見つかった2階へ8回行き来していたとした。
毎月の100万円や遺産目的で結婚したのに離婚される可能性があったことを動機に挙げ、事件後に野崎さんの会社などから約6800万円を取得したことも踏まえ、「遊ぶ金欲しさに億を超える遺産を得ようとした動機は悪質で人命軽視が甚だしい」と指弾した。
一方、被告はこれまでの公判で、密売人との接触は野崎さんから覚醒剤の購入を依頼されたためと説明。犯罪に関する検索や動画の履歴も「事件ものが好き」な趣味の一環で、死亡当日の8回の行き来も「2階へ行くのは日常茶飯事」で、不自然な行動ではないと釈明した。
また、被告が切り出した離婚話を野崎さんが引き留めたことがあったとして、検察側の動機も否定。自殺したり、覚醒剤を誤飲したりした可能性にも言及し、野崎さんに対し「もうちょっと死に方を考えてほしかった。あのタイミングで死んだせいで私は何年も人殺し扱い」と述べる場面もあった。