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「実は近い滋賀びわ湖」PR 県北部沿線の活性化なるか 湖西線開通50周年㊦

産経ニュース 2024年7月18日 13時39分

今年3月16日、北陸新幹線が敦賀駅(福井県敦賀市)まで延伸された。当日は敦賀市内でさまざまなイベントが実施され、滋賀県内の近隣自治体や観光協会もPRブースを設けて地域の特産品の販売や観光向けのパンフレットを配布するなどお祭りムードを盛り上げた。

湖西線は北陸線を経由して敦賀駅に乗り入れており、北陸新幹線の延伸による新たな人の流れを滋賀県内への誘客につなげたいとする期待は大きい。

滋賀県は、箱館山(同県高島市)から琵琶湖を見下ろす風景写真に「実は近い滋賀びわ湖」のキャッチフレーズを載せたポスターを作成。「敦賀駅からマキノ駅まで最短約27分」とうたい、今年3月末まで北陸新幹線の車内や敦賀駅構内に張り出した。担当者は「敦賀から誘客を図り、県北部の振興につなげたい」と言葉に力を込める。

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滋賀県北部地域は近年、人口減少に悩まされ、それに伴う交通インフラの維持も大きな課題だ。

滋賀県の統計によると、昭和49年7月の開通以降、湖西線の1日あたりの乗車人員は、沿線住民の増加などを背景に平成の初めごろまで右肩上がりで増え、その後もおおよそ横ばいが続いている。

ただ、乗車人員における南部地域への依存は年々強まっている。令和4年度の途中19駅の1日あたりの乗車人員4万3159人のうち、大津市中心部に近い大津京―堅田間(5駅)の乗車人員は2万9565人と全体の7割近くを占めた。20年前の平成14年度の同区間の乗車人員の割合は6割程度で、南北格差がじわりと広がっていることが分かる。

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加えて沿線自治体にとって悩ましいのが並行在来線の議論だ。北陸新幹線が今後、新大阪駅まで延伸した場合、湖西線が並行在来線にあたる可能性がある。

今月11日に開かれた北陸や東海など9県の知事らで構成する中部圏知事会議で、滋賀県の三日月大造知事は、並行在来線は存在しないと従来の考えを改めて強調した。

また、利便性向上のために地域住民が求めているのがエレベーターの設置だ。高架駅のある湖西線では、建物3階半に相当する長い階段を上る必要があるが、途中19駅のうち7駅でエレベーターが未設置などバリアフリーに対応していない。

そうした駅は高齢者らにとって買い物や通院に使いにくい交通機関となっており、滋賀県は国に対して整備方針の緩和を求めている。

交通政策に詳しい神戸大の正司健一名誉教授は「50年という節目は、街づくりをする上で鉄道の位置づけをもう一度考えるいい機会になるのではないか」と話している。

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