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近未来ロングノーズ「500系新幹線」 3年後めどに引退へ “世界最速”も老朽化に抗えず

産経ニュース 2024年7月24日 14時0分

フランス国鉄の高速鉄道「TGV」と並ぶ当時世界最速の時速300キロで平成9年に営業運転を始めた「500系」新幹線車両について、JR西日本は24日、老朽化を理由に3年後の令和9年をめどに完全引退させると発表した。近未来的なロングノーズと呼ばれる外観が人気を誇ったものの「のぞみ」としての運用はわずか13年間。その後は「こだま」専用車両として山陽新幹線で〝余生〟を過ごしていた。

「N700S」続々と

JR西は現在、500系計6編成(各8両)を保有しているが、投入から30年近くが過ぎていずれも老朽化が著しく、今年2月に4編成を令和8年度末までに引退させると発表。この日は、残り2編成についても9年をめどに営業運転を終了させる方針を明らかにした。

のぞみ向けとして最新型の「N700S」を10年度までの3年間で計10編成(各16両)投入しつつ、余剰となった「スモールエー」と呼ばれるN700系のうち計10編成を11年度までに16両から8両に改造。旧式化した500系2編成および700系8編成の引退の穴を埋める。

初の5時間切り

500系は、JR西が当時の技術の粋を結集して開発した〝フラッグシップ車両〟だった。車体の軽量化などによって高い走行性能を実現し最高時速は300キロ。当時世界最速だったフランス国鉄「TGV」と並んだ。

のぞみ専用として計9編成(各16両)が製造され、平成9年3月に新大阪-博多間で運行開始。同11月に東京へ乗り入れると、博多までの間を最短4時間49分で走破し、初めて5時間を切った。

ただ、500系がのぞみとして運行された期間は、9年から22年までの約13年間。整備など運用上の効率化を目的に、JR側がのぞみの車種をN700系に統一しようとしたためだが、のぞみから退く背景の一つには500系の〝弱点〟もあった。

近未来的が弱点に

ロングノーズと呼ばれるジェット戦闘機に似た近未来的な先頭部分は長さ約15メートルにも及ぶ。とがっているため、両端の車両の座席数がN700系よりも少ない。

このため、ダイヤの乱れなどで運行車両を急きょ別の車種から500系に変更した場合、先頭車両の指定席券を購入した一部の客の席番号がないという事態が生じ、その都度乗務員がそれらの客を別の席へ誘導しなければならなかったのだ。

20年以降は16両から8両に改造した上でこだま専用車両に転じた。のぞみほどは混雑しないことから、こうしたトラブルは少なくなった。

そして最高時速は285キロに制限され、近年では人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」や、キャラクター「ハローキティ」のデザインをあしらった車両が運行されるなど、イベント色を強めた存在に変化したが、かつての世界最速を惜しむ人は少なくない。

JR西による発表前の6月上旬、新大阪駅で500系をカメラに収めていた鉄道ファンの10代男性は「500系の完全引退はまもなく発表されるに違いない。時の流れだとはいえ寂しい」と話していた。(岡嶋大城)

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