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田辺三菱製薬売却 化学メーカーに描けなかった医薬品事業の成長戦略

産経ニュース 2025年2月7日 19時45分

三菱ケミカルグループは7日、子会社の田辺三菱製薬を約5100億円で米投資ファンドのベインキャピタルに売却すると発表した。大規模な投資が不可欠な医薬品事業。三菱ケミカルGは、本業の化学事業との相乗効果を見いだせないまま、成長には多額の研究開発費が必要な田辺三菱のグループからの切り離しを決めた。

三菱ケミカルGの前身である三菱ケミカルホールディングスは2020年、上場子会社だった田辺三菱を約5000億円かけて完全子会社化した。大阪に本社を置いていた田辺三菱の機能の多くは東京に移り、グループ内で技術・人材の交流などを図ってきた。

ただその間、17年に田辺三菱が買収していたイスラエルの新興企業の開発が遅れ、田辺三菱は20年に800億円超の減損を計上。さらに、一時はカナダ政府から承認を受けていた新型コロナウイルスワクチンの商用化を23年に断念し、事業から撤退した。また、完全子会社化以降、人材の流出も進み、昨年末には募集人員の上限を決めない希望退職も実施。買収当初、三菱ケミカルが想定していた化学事業と医薬事業の間の相乗効果は発揮できなかった。

医薬品事業は、基礎研究を始めて販売に至るまでに長い期間と巨額の資金が必要だという現実がある。そのうえ国内売上は薬価の引き下げで、より一層厳しいビジネス環境におかれている。開発の規模やスピード感が異なる化学メーカーとしては今後の中長期的な経営計画が描けない状態だった。

田辺三菱を買収したベインキャピタルが今後、どのような経営戦略を描いていくのか。他の製薬企業の経営者からは「事業ごとの切り出しの可能性もある」と指摘する声もあがる。

かつて、前身の田辺製薬は、武田薬品工業と塩野義製薬と並んで、薬のまちである大阪の「道修町御三家」と称されるほどの存在感を放っていた。その名前、歴史、何より創薬力がどのように受け継がれていくのか、注目が集まる。

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