かつて東洋紡績(現東洋紡)、鐘淵紡績(現クラシエ)と並ぶ「三大紡績」の一角を担い、日本の基幹産業である繊維産業を支えた名門、ユニチカ。斜陽産業となった繊維事業への依存脱却を図り、多角化を進めたが自力再建できなかった。官民ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)からの資金や経営人材の支援を受けて再生を目指すが、成長を見込んで残すフィルム事業などを大きく伸ばせるかが鍵となる。
「収益性が低下し、硬直化したコスト構造など潜在的な課題のある繊維事業まで踏み込んだ改革ができず、赤字事業が今まで残ってしまった」
135年の歴史を持つ祖業の繊維を手放す苦渋の決断について、ユニチカの上埜修司社長は会見でそう悔しさをにじませながら説明した。
2014年には債務超過の見通しとなり、主力銀行から総額375億円を調達。収益の核となるナイロンフィルムなどの高分子事業での過剰投資が、原燃料価格の上昇や競争激化で裏目に出て、「描いていた絵のような収益の回復に至らなかった」とした。
業界他社はすでに炭素繊維といった高機能繊維を活用し、自動車や航空機に使われる部品など新領域を拡大。ユニチカは新市場への進出に後れを取った。グループ売り上げの約4割を占める繊維事業からの撤退は会社の命運を左右する決断だといっても過言ではない。
ブランド力向上や繊維事業のPRを目的に1974年に始めた「ユニチカマスコットガール」(現ユニチカアンバサダー)では多くの女優を輩出してきたが、この起用も年内に終える方針だ。
岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは「競争力のある分野へシフトするのは避けられないし、(成長性に乏しい事業を売却することは)英断ともいえる。ただ判断は遅かったかもしれない」と、再建の多難さを指摘する。
来年4月下旬をめどに上埜社長以下取締役は全員退陣するが、上埜氏は「(来年8月までの)対象部門の事業譲渡などに全力を挙げて取り組んでまいりたい」と述べた。また、「従業員の雇用を承継していただけることも重要な命題として取り組む」と強調した。(田村慶子)