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うめきた2期、いよいよ始動 開放的空間にビジネスの種生まれるか 6日に先行まちびらき

産経ニュース 2024年9月3日 21時51分

JR大阪駅北側の再開発地域「うめきた2期(グラングリーン大阪)」が6日に先行まちびらきを迎える。最大の特徴である「うめきた公園」の約7割が開業し、ホテルや商業施設、企業・大学などの交流拠点もオープンする。グラングリーンの総事業費は約6千億円。その巨額投資が新興企業(スタートアップ)の育成や、関西経済の発展につながるのかが注目される。

「うめきた公園を中心に、それぞれの施設が有機的に連携する。それがグラングリーン全体の魅力を引き出していく」

グラングリーンの開発を手がける三菱地所の中島篤社長は、その発展の方向性をこう説明する。

グラングリーンの敷地(約9ヘクタール)の半分を占めるのがうめきた公園だ。うめきた2期は「公園の中にまちをつくる」ことをコンセプトに開発されており、公園の存在がいかに重要かがわかる。都心のターミナル駅直結の公園としては世界最大級の広さで、開放的な空間が多くの人の流れを呼び込むと期待される。

先行まちびらきで開業するのは公園のほか、商業施設や企業・大学などの交流施設、ホテルなどが入居する北館だ。

6日には、北館と公園内であわせて、約20のレストランやカフェ、書店、アウトドアショップなどがオープンする。人工知能(AI)で制御されたアバター(分身)が接客するコンビニエンスストアもあり、公園に隣接した開放的な空間だけでなく、先進的な取り組みも特徴だ。

北館内で開業する「JAM BASE(ジャムベース)」には立命館大や関西経済連合会など、学術機関や経済団体、企業が多く拠点を開設する。立命館大の担当者は「キャンパスでは出会うことができない、ベンチャー企業経営者などと交流すること」が狙いと説明した。

北館に隣接した場所には、ジャムベースの主要施設として、企業の情報発信などを担う新施設「VS.(ヴイエス)」も開業する。高性能の音響や照明装置を備えた大型スタジオから、企業がアイデアを効果的に発信できるよう工夫を凝らしている。

北館内には米ホテル大手ヒルトンの日本初進出ブランド「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」も開業する。ジャムベースに集まる人々が宿泊し、交流できる効果も期待されているという。

ただ、企業や大学の交流施設としては、隣接する大型複合施設「グランフロント大阪」にも事業創出拠点の「ナレッジキャピタル」があり、趣旨が似通っているとの印象は否定できない。新たな需要を喚起できるか、関係企業や団体の知恵が求められそうだ。

グラングリーンの開業はまた、キタと呼ばれる梅田周辺への人やモノの流れをさらに集中させる一方で、その発展を大阪市内、また関西全域にいかに広げるかも課題となりそうだ。関東やほかの地域から、人や企業を呼び寄せることができれば、関西経済全体の底上げにつながる。

昔は墓だった…うめきたが重ねた歴史

うめきた開発の舞台となった、JR大阪駅北側にはどのような歴史があるのだろうか。

うめきたエリアには江戸~明治時代にかけ、「梅田墓」と呼ばれる墓所があったことで知られる。大阪周辺にあった7つの墓所、「大坂七墓(ななはか)」のひとつで、天満周辺の墓所を移転統合してできたものだった。明治7年に、梅田墓の近くに大阪駅が開業し、墓は移転された。

梅田にはその後、私鉄なども乗り入れ、西日本の重要な交通の拠点となっていった。一方で、大阪駅の北側では明治末期以降、次々と学校が開校し、同地域は文教地域として知られるようになる。しかし多くの学校は、同駅における貨物駅建設のために、大正末期までに移転した。

昭和3年には、梅田貨物線が開通し、「梅田貨物駅」が誕生した。駅は、近接したエリアを流れる堂島川と運河でつながり、舟運とも連携。国際貨物も増大し、物流の一大拠点となっていった。

62年には国鉄が分割民営化され、旧国鉄の債務返済のために、操車場(ヤード)を含めた貨物駅用地、約24ヘクタールの土地は売却される方針が決まった。貨物駅の機能は他の駅に移転することとなり、「大阪最後の一等地」と呼ばれた同エリアの開発が動き出す。

平成14年には、政府が都市再生緊急整備地域に指定。コンペが行われて、まず7ヘクタールが開発されて25年4月に「うめきた1期」としてグランフロント大阪が開業した。

残る17ヘクタールも多くが緑地化される方針が決まり、「うめきた2期」としてグラングリーン大阪の開発につながっていった。(黒川信雄、田村慶子)

日本総合研究所の藤山光雄・関西経済研究センター所長

うめきた2期が先行開業するということは、大きな意義がある。2つの理由がある。

1つ目は、増大する訪日外国人客に、その存在をいち早く知ってもらえるという観点だ。新型コロナウイルス禍に影響を受けた訪日客数は回復しているが、その需要をつかむのは少しでも早い方がいい。うめきたの存在を知ってもらう上でも重要だ。

2つ目は、(来年4月の)万博開幕前というタイミングだ。万博前に開業することで、国内外からの来場者や、万博に向けて訪日する各国関係者にも、うめきたを訴求できる。訪日客にとり、ターミナル駅に隣接した都市公園は魅力的だ。歩行者デッキで駅周辺の移動も容易になり、それらを幅広くアピールできる。

万博ではスタートアップなどによる、環境などを意識した先進的な取り組みも多く紹介される。グラングリーン大阪に開設される企業・大学などの交流施設で、それらの企業が活発な活動を展開する可能性もある。万博とグラングリーンの相乗効果が期待できるのではないか。(聞き手 黒川信雄)

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