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関西経済持ち直しも、中国の減速影響に懸念 アジア太平洋研、6年版白書

産経ニュース 2024年10月1日 0時0分

民間シンクタンクのアジア太平洋研究所(APIR)は1日、令和6年版の「関西経済白書」(税込2750円)を発刊した。5年度の日本、関西経済は、新型コロナウイルス禍からの正常化に伴い、総じて持ち直したと分析。6年度については、減速する中国経済の影響に懸念を示した。

白書では、5年度の関西経済に関し、緩やかな持ち直しの動きがみられたとしながらも、消費者物価の高止まりによる実質賃金の低迷や、雇用環境の停滞などのため、「力強い回復には至っていない」と言及した。

一方、関西ではインバウンド(訪日客)需要が伸び、2025年大阪・関西万博に関連した公共工事も高水準で推移したと評価。関西の実質域内総生産(GRP)成長率は6年度が1・2%、7年度が1・4%と予測し、両年度とも日本の国内総生産(GDP)成長率を上回るとの見通しを示した。

関西経済の課題として挙げたのが、中国の景気後退の影響だ。関西は、半導体などの電子部品を中心に中国との取引が強いとし、米中の貿易摩擦が関西経済に悪影響を及ぼすと指摘した。

万博起爆剤に、人材と投資呼び込み提唱

APIRの令和6年版「関西経済白書」は、関西経済の発展に向けて、2025年大阪・関西万博を起爆剤として活用することを提唱する。インバウンド需要を取り込む重要性を強調し、経済成長の実現には、万博後も人や投資を持続的に呼び込む必要があるとした。

関西経済が伸び悩む要因として、白書では関西が「もうかる産業構造」になっていないことを挙げる。首都圏である南関東は、原材料費や運送費などがかかりにくい金融業・保険業や情報通信業のシェアが高いことから、事業従事者1人当たり付加価値額は1千万円を超えている。一方で関西は、卸売業や小売業、製造業が中心であるため利益率が低く、同付加価値額は1千万円を下回っている。

産業構造の転換が課題となる中、関西は蓄電池や水素関連の産業が集積している。万博はこれらの産業を軸とする「グリーントランスフォーメーション(GX)」がテーマであり、実証事業を通じて関西の強みを世界に発信すべきだと訴える。

さらに、万博を契機に成長が見込まれる関西のインバウンド市場にも着目。訪日客の消費単価は着実に上昇しながらも、観光産業での労働力不足から需要を十分に取り込めていないと指摘する。

観光客の急増が住民生活や環境に影響する「オーバーツーリズム(観光公害)」の拡大も不安視されているが、白書は、技術革新や観光の周遊・広域化による問題解決の視点を提言している。

APIRの稲田義久研究統括は、万博後を見据えた関西の経済成長に関し、「人材と投資を呼び込むための制度整備、規制緩和や生活環境の整備が重要となる」と話す。(井上浩平)

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