国内で稼働する原子力発電所の中で最も古い関西電力高浜原発1号機(福井県高浜町)が14日で営業運転開始から50年となった。国内の原発再稼働が難航する中、生成人工知能(AI)の普及などで拡大する電力需要に対応するには、運転開始から50年を超える高経年化原発の長期安定稼働が欠かせない。いかに安全性を担保するかが課題となる。
一時は世界3位の設備容量
日本の原子力発電の歴史は、日本原子力研究所(当時)の動力試験炉「JPDR」の運転が始まった1963年を起点とする。その後、70年ごろから原発の営業運転が各地で本格化し、90年代には原子力発電の設備容量は世界3位となった。
しかし、2011年3月11日に発生した東京電力福島第1原発事故を機に日本の原発に対する見方は厳しくなり、全国の原発が相次いで運転を停止。12年に原子力規制委員会が発足した後、原発の安全対策をより強化した「新規制基準」が導入された。
規制委は今月13日、日本原子力発電が再稼働を目指す敦賀原発2号機について、新規制基準に適合していないとする審査書を決定。規制委発足以来初の審査「不合格」となった。原子炉直下に活断層が延びている可能性を否定できないというのが理由で、原発の安全性確保の難しさが改めて浮き彫りとなった。
多くで再稼働のめど立たず
福島第1原発事故以降は新規着工も途絶え、国内にある原発33基(建設中除く)のうち、これまでに審査に合格したのは17基。再稼働しているのは高浜1号機を含めて13基で、全体の半数以上はまだ再稼働のめどが立たないのが現状だ。
国はエネルギー基本計画で、発電量に占める原子力の電源構成比率を30年度に20~22%にする目標を掲げるが、22年度実績で原子力の構成比は5・5%と遠く及ばない。こうした状況で電力を安定的に供給するには、高経年化原発の活用が欠かせない。
来年6月には60年を超える運転を可能とする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が全面施行される。運転開始30年を超える原発は、10年ごとに施設や設備の劣化状況を確認することが義務付けられており、高浜1号機でも点検・交換が進められている。電気ケーブルを難燃性のものに替え、28年度には原子炉容器の炉内構造物の取り換えも予定している。
関電管内では、高浜2号機や美浜3号機も数年以内に運転開始から50年を迎える。国が24年度内をめどに策定する第7次エネルギー基本計画に向けた議論は、現行計画で「可能な限り原発依存度を低減する」とした文言の見直しが焦点となるが、原発新増設への道のりは険しい。当面は既存の原発をいかに維持するかが重要となる。(桑島浩任)