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「最低賃金1500円」主要政党が公約に 中小企業は価格転嫁できず重荷

産経ニュース 2024年10月17日 7時30分

27日に投開票される衆院選では、主要政党が「最低賃金1500円」への引き上げ目標を公約に掲げた。だが、ただでさえ円安に伴う原材料費の高騰や光熱費の値上がりに圧迫されている企業側にとって、収益に見合わない形で人件費が膨らめば経営の打撃になりかねない。特に中小企業をどのように支援していくのか、政治のリーダーシップが問われている。

「いつまでにどのようにして1500円という最低賃金目標を達成するのか、各政党には具体的に示してほしい」。大阪府東大阪市でボルトなどの金属部品を製造する中小企業の社長は、こう訴える。

同社は約150人の従業員を抱え、約9割を正社員として雇用。原材料費や光熱費の値上がりが続いたため取引先と交渉し、製品への価格転嫁を認めてもらうことで利益を確保している。従業員の賃上げにも取り組んできた。

同社は納品先から直接仕事を請け負っているため、価格転嫁の交渉がしやすい面もある。一方、周辺の同業他社には2次下請け、3次下請けで受注する企業も多いため価格転嫁の交渉が難しく、何年にもわたって賃上げができていないケースも少なくないという。

目標を前倒し

今年度の最低賃金は全国平均で時給1055円。物価高や人手不足を反映し1004円だった前年度から大幅に増えたが、石破茂首相は所信表明演説で2020年代に1500円とする目標を示し、30年代半ばまでとした岸田前政権の目標を前倒しした。立憲民主党や公明党、共産党も公約に1500円を明記した。

20年代に1500円まで引き上げる場合、ここ数年3~5%程度で推移してきた伸び率をさらに加速させる必要がある。

農業用機械メーカー大手のクボタ(大阪市)は「持続的な賃上げは必要と認識しているが、最低賃金1500円となると引き上げを可能とする経済環境や成長戦略などが不可欠であり、政治のリーダーシップに期待したい」とコメント。関西のあるエネルギー事業者も「実現には企業がしっかりと収益を出すことが不可欠」とし、「企業が稼ぐ力を高めるための技術開発支援や生産性向上につながる施策を期待したい」と求めた。

ペース議論を

中小企業の経営者も、賃上げの必要性を認識している。「従業員のために賃上げをしたいが、コストの増加で利益が出せずに苦しんでいる中小企業は多い。大企業よりも税制面で優遇し、成長につなげるような踏み込んだ中小企業対策が必要だ」。金属部品を製造する中小企業の社長はこう訴える。

消費者物価は2%台の上昇が続いており、日本総合研究所の山田久客員研究員は、物価上昇が続けば最低賃金はいずれ1500円に到達すると予想。ただ「引き上げのペースが合理的かどうかを議論しないと、中小企業の経営に影響が出てしまう」と指摘した。(山本考志、桑島浩任)

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