Infoseek 楽天

天ぷら油火災年間4000件に即対応 自動消火機能を搭載したガスコンロ進化の軌跡 「昭和100年」だヨ全品集合 大阪ガス編

産経ニュース 2024年9月9日 11時0分

大阪ガス、2回目のテーマは《自分の強みを出せ!》―である。電気にはないガスの強みは「火」。そこでガスの主力商品「ガスコンロ」の開発秘話を聞いた。大阪ガスは大正13年3月、一般の婦人を集めて「第1回割烹(かっぽう)料理研究会」を開催した。それが「大阪ガスクッキングスクール」と名前を変えて現在まで続き、今年で100周年という。「炎」と「食」を結び付けたこの努力こそが、大阪ガスの最大の強みだろう。

必要は発明の母

大阪ガスの社内向け小冊子『がす燈』(昭和34年5月号)にこんな一文がある。

『一番ガスを使う料理用ですら電気が増えている。ガスが好まれるのは安価であるのが唯一の理由。売り込みにしのぎを削る電気メーカーは、電気釜に続いて、電子レンジ、電気湯沸器、電気風呂を製作し、ガスの牙城の〝熱源〟に迫る日が必ず来る』

危機感あふれる文章。それも34年に…。この危機感こそが商品開発への「力」になったのだろう。今回も技術開発のリーダーだった松原秀樹さん(80)と現在、大阪ガスマーケティング商品技術開発部の亀田恭治さん(64)にも話を伺った。

かまどやへっついさんをガスに変えた〝台所革命〟。そこに登場したのが「ガスコンロ」である。

「ガスの強みはなんといっても直火。火は調理の基本です」と松原さん。当時のコンロは「炊飯器付き」が一般的だったというのが驚きだ。片方がコンロでもう片方に炊飯器が備えつけられ、お釜を外して普通のコンロとしても使えるようになっている。

59年には弁当箱型の専用釜を使った「炊飯機能内蔵型」コンロが登場する。右がグリルで左が箱型の炊飯器になっており、これ1台あればコンロ調理のほかに、魚を焼く、ご飯を炊く、炊飯器の自動消火機能で目玉焼きが自動でできる―という優れものだ。

「当時はバーナーの燃焼技術をはじめ調理性、操作性、デザイン性など次々に開発を進めていく時代。〝必要は発明の母〟というわけです」と亀田さん。

問題も発生した。煮こぼれで火が消えて起こる「ガス漏れ」。グリルも両面から焼くタイプになり、焼き過ぎてたまった脂が発火する「グリル火災」。さらに天ぷらを揚げているときに電話や来客の応対など何らかの理由でコンロのそばを離れ、その間に鍋の油の温度が上昇し発火する「天ぷら油火災」。50年代には全国で年間4千件もの天ぷら油火災が起こったという。

もちろん大阪ガスマンたちはすぐさま対応した。52年には火が消えると自動的にガスが止まる技術を開発。さらに天ぷら鍋の過熱を感知し、自動的に火を止める機能も開発された。それが60年ごろから搭載されるようになった「調理油過熱防止装置」である。

現在でも自宅のコンロのバーナーの真ん中についている、押すとペコペコへこむあの突起。へっこんだ後に戻るバネの力によって一定の力で鍋の底に当たり、正確な加熱度がわかるというすごい発明である。

「大変だったけれど、何か新しい機能をひとつ開発するたびに、こんないい商品ができた―とうれしくなりました。いい時代だったと思います」と松原さん。

ええ言葉やなぁ。「昭和100年」ばんざ~い!

マッチから自動へ 進化する点火方法

ガスコンロの点火方法は時代とともに進化した。最初は「マッチ」での点火。「もっと簡単にして」というニーズに応え昭和34年、乾電池とヒーターによる方式の「自動点火」が開発された。だが、当時の乾電池は現在ほど性能がよくなくすぐに消耗。ヒーターもよく切れた。

そこで41年、セラミック製の素子をハンマーでたたいて約1万4千ボルトの高電圧を発生させ、スパークを飛ばして点火する「圧電点火」方式が生まれた。つまみをひねり「バチン!」と音がすると火がつく-あれである。

だが、問題がひとつ。ひとひねりで一発しかスパークが飛ばないために、ガスの出るタイミングと合わせるのが難しい。開発者はまた考えた。そして51年に誕生したのが、現在も続いている「連続スパーク点火」方式。乾電池を使い、文字通り連続(約7秒間)でスパークを飛ばすのだ。よく考えました!

料理教室 最新のガス器具備え100周年

大阪ガスのいいところは商品を売りっぱなしにしないところ。

「台所革命」を果たした大正13年3月、ガス調理器具を宣伝普及するため、大阪・中之島の本社(当時)に主婦らを集め『第1回割烹料理研究会』を開催。そして昭和8年、御堂筋に「大阪ガスビル」が完成すると、その7階で『瓦斯料理講習会』を開始した。

11年の案内によると、講習は1日約3時間。季節料理やお正月のお節料理などで、会費は1人1回50銭。当時の最新のガス機器、大理石の調理台、ドイツ製のレンジや湯沸器などが設備され、定員100人。毎回満員の盛況ぶりだったという。

「作った料理はみなさんで食べる。写真を見るとみなさん正装(着物)。当時はナイフ、フォークを使って食べる西洋料理の食事作法に慣れることを目指していたようです」と大阪ガスクッキングスクールの北島由美マネジャー。

ことしが100周年となる「クッキングスクール」は、名称だけでなく大きく形態も変わった。

「幅広い年齢層になっています。昔はブライダルクッキングといって習い事のひとつでしたが、今の人たちにそんな感覚はありません。料理が好き、親子で作りたい。社員のコミュニケーション強化のため会社の研修にも利用されています」

4~6人が一組で「料理」「パン」「スイーツ」など、ひと月に150クラスもあり選択自由。皆さんもお試しあれ!

あまから手帖

大阪ガスグループの「クリエテ関西」が出版する関西のグルメ雑誌。創刊は昭和59年11月。ガス器具を使っている飲食店を紹介し応援しよう―という思いからできた熱~い本。

写真はことし6月に発売された吉本新喜劇65周年記念本。『吉本新喜劇とあまから手帖 くうのむわらう』(1200円)。本当は教えたくないお店や、打ち上げなどで吉本芸人がよく使うお店が紹介されている。(田所龍一)

この記事の関連ニュース