先日、仕事で漫画「じゃりン子チエ」を読んだのを機にふと昔見たアニメ版のオープニングが気になり、改めて映像を見て思わずうなった。主題歌に合わせて、チエちゃんたちキャラクターが登場するのだが、花札がモチーフになっている。子供の頃は気付かなかったが、作品世界との合致といいおしゃれさといい、なんというハイセンス。大人にしか分からない味わいが隠されていたのだと、しばし見入ってしまった。
NHKEテレでは10月から昭和の名作人形劇「プリンプリン物語」(昭和54年放送開始)を再放送している。過去の歴代人形劇を再放送する「おとなの人形劇」シリーズの一つで、前作は「人形歴史スペクタクル 平家物語」(平成5年放送開始)だった。「平家物語」は人形版大河ドラマと言うべき大人を夢中にさせる骨太の内容だったが、今作は果たして-。
15歳のプリンセス、プリンプリンがまだ見ぬ祖国を探し仲間と旅をする物語。ポップな作りは一見子供向けだが、これがなかなか皮肉や示唆に富んでいる。
プリンプリンが暮らすのはアル国アルトコ県アルトコ市。市役所はアルトコ中央市役所、略して「アル中市役所」、アルトコ中央警察署も略して「アル中警察」とシャレがきつい。プリンプリンを狙う怪人のランカーは兵器の販売で巨万の富を築いた「死の商人」だ。警察署にパトカーを寄付するなど善人ぶる裏で、利益のために戦争を賛美するという社会の暗部もコミカルかつ鋭く描いている。
プリンプリンたちがランカーの悪事を役所や警察署に訴え出ても、係長は課長に、課長は部長に、部長は市長や署長に判断を仰ぎに行ったり、大量の書類への記入を求められたりと「お役所仕事」を笑いの対象にしながら、痛烈に批判する。劇中ではプリンプリンたちが突然歌い出すが、真実をあえて見ようとしない大人に向けた「大人って変ね。どうして本当のことが分からないのかしら」という歌詞は耳が痛い。
今回数十年ぶりに懐かしく再放送を楽しんでいる視聴者が多いようだが、子供の頃は作品に隠されたメッセージにどれだけ気付けただろうか。なるほど、これはたしかに社会というものを知ってから見る方が面白い「おとなの人形劇」なのだと、納得せざるを得ない。(佐)