特別支援学校高等部を卒業した人らの公立高校入学を独自の規定で認めていない大阪府教育庁が、令和7年度から夜間定時制高校に編入学という形で門戸を開く方針を決めたことが分かった。文部科学省が4月に出した高校の入学資格に関する通知を受けての対応で、これまで受験資格がないと門前払いされてきた人にも高校で学ぶ道が開かれる。
特別支援学校高等部の卒業は高卒資格とはならない。このため高等部を卒業後、学び直しで夜間中学に通う生徒の中には、定時制高校に進学して資格を取得したいと希望する人がいるが、大阪独自の入試規定に阻まれて受験できないのが現状だ。
公立高校の入試は実施要項で応募資格などを定めており、「中学校を卒業、または卒業見込みの者」などと、志願できる人のみを明記する都道府県が一般的という。これに対して、大阪の場合は志願できない人も独自に規定し、特別支援学校高等部や高校を卒業した人、外国の学校教育で12年の課程を修了した人らは除外対象となっている。
府教育庁によると、規定の運用は公立高校の志願倍率が高かった時代に始まり、平成28年度入試から実施要項で明文化された。初めて受験する中学生の進路保障を優先する意味合いがあったという。
ところが、現在は公立高校の約半数が定員割れの状況だ。4月には文科省が、特別支援学校高等部や高校を一度卒業したことで、高校入学の資格がなくなるものではないとする通知を出した。
また、独自規定の影響で昨年度、受験を断念せざるを得なかった人が実際にいたことなどから、府教育庁は対応策を検討。「一度も高校を卒業していない人の学びの場を保障しながら、高校での学びを希望する人にも機会を用意することが大切」として、除外対象だった人も7年度から夜間定時制高校で受け入れることを決めた。
これまでの学びを生かして学年などが決められるよう編入学の形を採用。入学者選抜とは異なるため実施要項は変更せず、編入学試験や合否判定は各校が実施する。年明けにも全府立高校や市町村教育委員会に通知を出す予定だ。
ただ、受け入れ先については夜間定時制高校に限定しており、府教育庁は「まずは現状のニーズに対応することを優先した。全日制高校を含めて拡大するかどうかなど、引き続き受け入れのあり方について検討していく」としている。
受験できなかった23歳男性「あこがれの高校で学べる」
大阪府立定時制高校への進学を希望しながら、昨年度は受験の機会さえ与えられなかった高橋智司さん(23)=仮名=は、高校への道が開かれたことに「うれしい。あこがれの高校で授業を受けられる」と喜んだ。
高橋さんは発達障害と診断され、虐待などのため中学の途中で施設に入所。地域の学校から特別支援学校中等部に移った。高校進学を希望したものの、周囲の状況などで受験はかなわず、そのまま特別支援学校高等部へ。大病による長期入院などもあり、義務教育や教科学習を十分に受けずに高等部を卒業した。
闘病生活を終えた後、学び直しで夜間中学に入学。仕事を探す際に高卒資格を求められることもあり、定時制高校進学を目指して勉強に励んでいたが、昨年度は大阪の独自規定に阻まれて出願もできなかった。
悔しい思いを抱えながら現在も夜間中学に通っている。「高校で学べる機会を」と訴え続けてきただけに、夢が実現する可能性が生まれたことに「行事や部活なども含めて高校生活がとても楽しみ」と話した。