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世界のクラシックとつながった70年万博から55年 2025万博は大阪の音楽を世界の人に

産経ニュース 2025年2月1日 17時15分

1970年大阪万博では、欧米のオーケストラが集結したコンサート「EXPO‘70 CLASSICS」が半年にわたって開かれ、日本人が本場のクラシック音楽に触れる貴重な機会となった。55年がたって4月に開幕する2025年大阪・関西万博。世界の人々が集まる機会に、会場内外で演奏会を開く大阪のオーケストラは「今度は大阪の音楽を世界の人に聴いてほしい」と意気込む。

『日本万国博覧会公式記録』によると、フェスティバルホール(大阪市北区)で開かれた「EXPO-」には、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団やカナダ国立バレエ団、ボリショイ・オペラなど、海外から17組が出演。名匠ヘルベルト・フォン・カラヤンが指揮するベルリン・フィルのベートーベンは、圧倒的な人気を呼んだという。

出演交渉を行ったのは1958年から毎年、海外のオーケストラを招聘(しょうへい)しフェスティバルホールで「大阪国際フェスティバル」を開催していた故・村山美知子さんだ。こうした実績をみて、日本万国博覧会協会がプロデューサーを委嘱した。

日本フィルハーモニー交響楽団(指揮・小澤征爾)や大阪フィルハーモニー交響楽団(指揮・朝比奈隆)など、日本のオーケストラも出演。3月15日~9月12日の計103公演で、観客は延べ約20万人に上った。

クラシック音楽の世界水準に

愛知県立芸術大の井上さつき名誉教授(音楽学)によると、当時の万博に各国のオーケストラが集まるのは「一般的だった」という。だが、それまでの日本においては欧米の一流オーケストラの公演は数少なかった。「オーケストラやオペラが一気にやってくるなんて、とんでもない。大きな試みだったと思う」

70年万博以降、来日公演は珍しいものではなくなっていった。「EXPO-」は日本人がクラシック音楽の世界水準に触れるとともに「欧米の関係者が、日本が有望な市場だと知る機会になった」と井上氏は考える。

それから55年。当時の日本のオーケストラの技術は、欧米の水準には到達できていなかったが、現在の状況について、大阪フィルの事務局長、福山修さんは「堂々と演奏できるレベルにある」と胸を張る。

4月13日に開幕する大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。人工知能(AI)や医療など最新の科学技術に注目が集まりがちだが、福山さんは音楽にも注目してほしいという。「音楽はまさに命を輝かせるためにある。音楽で大阪を伝えたい」

大阪の人に育てられたオケの個性

大阪を拠点とする4大オーケストラは、大阪フィル▽関西フィルハーモニー管弦楽団▽大阪交響楽団▽日本センチュリー交響楽団。このうち、1947年創設と西日本で最も古い大阪フィルの持ち味は、ダイナミックでメリハリのある演奏だ。「声が大きくてはっきりものを言う大阪の人が、何が言いたいのか分かりやすい演奏を好んだことで培われた」と福山さん。オーケストラには、拠点とする土地の風土や人々とのコミュニケーションによって作られた個性があるという。

そんな「大阪の音楽」を世界中から訪れた人たちに聴いてもらおうと、万博期間中、各楽団が渾身(こんしん)のコンサートを準備している。大阪フィルは4月17、19日、万博開幕記念の特別演奏会をザ・シンフォニーホール(大阪市北区)で開く。関西フィルは万博会場での公演を予定。5月には、4楽団が一堂に会する「大阪4オケ2025」がフェスティバルホールであるほか、各楽団が定期演奏会を予定している。

70年万博の年に創立された関西フィルの常務理事で楽団長の大野英人さんは「世界のどのオーケストラにも負けないプログラムだと自負している。世界中から来られるお客さまに、ぜひ成熟した演奏を聴いてほしい」と話した。(藤井沙織)

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