食欲の秋。スーパーに行けば、おいしそうな食品が並んでいて目移りするが、中でもお弁当のおかずやバーベキューに大活躍のウインナーは子供から大人まで身近な存在だ。にもかかわらず、ソーセージとウインナーの違いや、原料、皮(腸)の種類などギモンは多い。加熱せずに食べられるという噂も。平成7年に登場し、丸大食品(大阪府高槻市)の看板商品となっている「燻製屋(くんせいや)」からウインナーの秘密に迫った。
トリビア満載
まずは大問題の「ソーセージ」と「ウインナー」の違いについて。丸大食品のハムソーマーケティング部商品企画課リーダーの倉橋大樹さんは「ソーセージという大分類の中に、ウインナーやフランクフルトなどがある。『ソーセージとウインナー』は『果物とリンゴ』のような関係です」と説明する。
つまりソーセージは、肉や調味料などを牛や豚の腸につめた加工品の総称。腸の扱いについてはウインナーが羊、フランクフルトは豚、ボロニアソーセージは牛などと、太さによって使い分けられている。コラーゲン由来の人工皮はサイズが均等になるメリットはあるが、パリッとした食感は天然腸だけの特徴という。
材料は何だろう。倉橋さんは「牛は値段が高いこともあり、日本では主に豚と鶏を使うのが一般的」という。国の法律で定められたソーセージのJAS法にはさまざまなルールがある。原料肉に関しても、厳しい基準を満たした特色JASの認定を受けている「燻製屋」は豚肉のみを使用しているが、標準JAS商品は豚や牛のほかウサギや鶏などの肉、さらに基準以下のでんぷんや卵白の粉などをつなぎに使うことも認められている。
製法で差別化
燻製屋は平成8年に新たに設けられた「特色ある製法」の基準をクリアした業界初の「熟成ウインナー」。他社との差別化を図り、競争に勝つために起死回生として取り入れた製法で、72時間以上、じっくりと低温で寝かすことで肉の中のアミノ酸が増え、それがうま味になって肉本来のおいしさを際立たせる。サクラの木をいぶした煙で香りづけも行っている。
ちなみに日本ではあらびきが好まれるが、海外ではそうとは限らず「ドイツでは細びきが主流です」(同部の山本悟司部長)。過去には各社とも細びき商品を売り出したがなじまなかったようだ。
ウインナーを何種類も買うことはあまりないが今回、燻製屋シリーズを食べ比べると予想以上に味の変化を感じた。新発見だ。好みは人それぞれだが、倉橋さんは「実はメーカーや商品によっても大きく違う。ぜひいろんな味わいがあることを知ってほしい」。何もつけずに食べるとより違いがはっきりわかる。
災害常備食に
ウインナーは加熱しないでも食べられるのか-答えは「イエス」だった。
総務課の藤本広志課長から説明を受けた。
「災害時に停電になるとみなさん、冷蔵食品から先に食べると思います。そしてウインナーは加熱が必要と思って捨てられがち。実際には製造過程で加熱しているので食べられます」
このため備蓄食「ローリングストック」にも向いているそうだが、災害イベントなどで情報を伝えるとほとんどの人が驚くという。「知らないと食品ロスにもつながるので、災害の多い今、情報発信に力を入れています」
「加熱食肉製品」の表示があるウインナー類は袋から出してすぐ食べられることを覚えておきたい。ただし加熱した方がおいしさはアップする。(北村博子)
◇
懐かしCMの裏話
丸大食品といえば印象深いのが、1980年代に流れていた巨人が登場するハンバーグのCM。「ハイリハイリフレハイリホ~♪」のCMソングや「大きくなれよ~」のセリフが懐かしい。
山本部長が裏話を教えてくれた。
「実は巨人役と子供は40~50メートル離れていて、遠近法を使って撮影されました。当時、そんなに広い撮影場所が日本にはなく、ハリウッドまで行ったと聞きます」。すごい気合の入れようだ。
同社は昭和29年、小森敏之が大阪市福島区で創業。日本ハムや伊藤ハムなどとは異なり、魚肉ハム・ソーセージからのスタートだった。食肉製品の扱いは36年からで「ハムメーカー大手の中では後発。会社を知ってもらいたい一心で創業社長がアイデアをひねり出し、宣伝にも力を入れたようです」
ウインナーについて調べてみると、日本人の記憶に残る伝説のCMの裏側も知ることができた。
◇
夜に食べたくなる味も
「シャウエッセン」を販売する日本ハム(大阪市北区)は先月、夜に食べたくなる味付けにアレンジした「夜味」を発売した。
ウインナーは日本では「手抜き料理と思われる」などの理由から夕食に使う習慣があまりなく、同社が実施した調査でも約80%が、朝食やお弁当として消費されていることが裏付けされたという。
そこで「夜にも食べて!」という思いを伝えるプロモーションの一環として夜味を販売するに至ったという。晩ご飯のおかずや酒のつまみになる、スパイスが効いた濃厚な味わいが特徴で、発売から1カ月で「計画の3倍の売れ行き」という。
また、夜味に関しては、腸が破れやすいためご法度だった調理法「焼き」を推奨。焼くことでスパイスが引き立ち、香ばしくジューシーな仕上がりになるという。来年1月までの期間限定販売のため気になる人はお早めに。