今回は、天王寺動物園(大阪市天王寺区)でサルたちが暮らすエリア「サルアパート」と「ヒヒハウス」のお話です。現在のサルアパートは、昭和61年3月に竣工しています。ヒヒハウスは、同じく61年2月に財団法人日本宝くじ協会から寄贈を受けて建築されました。
当時のパンフレットには、小型サル類を系統分類学的に展示配列し教育効果を高めるように配慮してつくられたとあります。当初は、フサオマキザル▽カニクイザル▽サバンナモンキー▽ブラッザグエノン▽マンドリル▽マントヒヒ-など14種が飼育されていました。
霊長類の分類は、大きく原猿類と真猿類に分けられます。原猿類は、キツネザル類、ロリス類などでサルアパートには、クロシロエリマキキツネザルがいます。真猿類は、さらに広鼻(こうび)猿類と狭(きょう)鼻(び)猿類に分けられます。
広鼻猿類とは、南米大陸に生息する新世界ザル(=南米ザル)で、狭鼻猿類とは旧大陸(アフリカ・アジア)に生息する旧世界ザルと呼ばれ、類人猿(チンパンジー・ゴリラなど)とヒトを含みます。
旧世界ザルは、前期中新世(約2000万年前)のアフリカ大陸で出現した後、葉食性のコロブス類と果実を中心とした雑食性のオナガザル類に分かれて進化しました。日本固有種のニホンザルはオナガザル科のマカク属に分類され、尾が短いのと食べ物をためることのできる「頬袋」を持つのが特徴です。
現在のサルアパート、ヒヒハウスには、新世界ザルのフサオマキザルや旧世界ザルのサバンナモンキーなど合計10種類21頭のサルたちが暮らしています。41歳と国内最高齢を誇るブタオザルのキキ(メス)、国内では当園にしかいないドリルのドンなど、バラエティー豊かなサルたちがいます。
サルアパート、ヒヒハウスは当時としては、寝室内のガラス展示、トップライトによる自然光の取り込みなど先端の施設でした。現在は「天王寺動物園101計画」に基づく生態的展示を目指し、関係職員で新たな小型サル類の展示施設を計画中です。(天王寺動物園園長・理事兼務)獣医師 向井猛
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むかい・たけし 神奈川県藤沢市出身。 北海道大大学院獣医学研究科修士課程修了後、札幌市の円山動物園で獣医や職員として勤務した。 今年4月から天王寺動物園園長。 漫画『動物のお医者さん』に「M山動物園の向田獣医」として登場した。