今月、前任地の神戸から大阪社会部に異動し、大阪地裁や大阪高裁の裁判を取材する司法担当となった。
着任初日から傍聴を続けているのは、平成30年2月に羽曳野市の路上で発生した殺人事件の裁判員裁判だ。被告の男は当時、被害者の知人宅の隣に住んでおり、以前から近隣トラブルがあったとみられる。しかし、事件に直接証拠はない。被害者は背中を刃物で刺されて死亡したが、凶器すら見つかっていない。
捜査は難航し、被告が府警に逮捕されたのは発生から約4年後だった。検察側は防犯カメラに映った不審な人物と被告の身体的特徴が一致することなどを証拠とするものの、被告は無罪を主張している。
状況証拠の積み重ねで被告が犯人だと断定できるかが焦点で、被害者1人の殺人事件としては異例の長期審理となっている。
判決は9月下旬で、予備日を含めて20回以上の期日が指定された。6月10日に初公判が開かれ、今月8日には第12回公判まで進んだ。
そのうちの1つでは、防犯カメラ映像を解析した科学捜査研究所の元研究員への証人尋問が実施された。元研究員は、防犯カメラに映った人物と被告の体格がほぼ一致するという結果を説明したが、顔までは分からなかったとした。
ほかにも警察官や被告の家族といった証人が出廷。慎重に審理は進む。裁判員は最終的にどのような決断を下すのか。判決まで取材を続けたい。(弓場珠希)