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地元「にしよど」に幸せ運ぶ恩返し 訪問介護事業所「こうのとり」社長の河野一人さん(38)、研修担当の児島亮一さん(45) プロフェッショナル 専門学校から

産経ニュース 2024年6月30日 12時0分

大阪市西淀川区のJR塚本駅西口にあるアーケードの商店街「サンリバー柏里」。懐かしい雰囲気が漂う一角に訪問介護事業所「こうのとり」が拠点を構える。社長の河野一人(こうの・かずひと)さん(38)、研修担当の児島亮一さん(45)の2人が介護福祉士として、地元「にしよど」の障害者や高齢者らの生活を支える世話役として携わっている。

2人は滋慶学園グループの大阪保健福祉専門学校(同市淀川区)の社会福祉科を卒業した同期生。中学では後輩、先輩の間柄だ。

福祉の世界を志した理由は―。河野さんは小学生のころ、母親をがんで亡くした。「父が鉄工関係の職人なので、工業高校に通ったが、自分がなりたい道と違うなと思った。地域のおじいちゃんやおばあちゃんに育てられ、高齢者福祉がしたい」と恩返しを考えた。

児島さんは高校卒業後、工場や和菓子職人などモノづくりの仕事をしたが、腰を痛めてリハビリに通った際、「人と接する仕事もいい」と福祉の世界を知り、24歳で進路を変更した。

平成19年3月卒業の2人が通った社会福祉科は高齢者や障害者、児童を対象に幅広く福祉を学べる。

河野さんは「福祉の基礎を学べ、福祉への考え方がしっかりできた。専門学校なので、卒業後も同じ業界にいる仲間が多くできた」のが自身の財産だ。後進の指導に当たる児島さんも「今ではもう少し先生らの教え方を学んでおけばと思うが、現場の話はためになっている」と振り返る。

卒業後、2人は別々の介護現場で実務経験を積み介護福祉士の資格を取得した。河野さんが「にしよど(西淀川区)に帰り、何かをしたい」という思いから独立し、平成26年7月に「こうのとり」を創設。この名称は周囲から「河野やから、幸せを運ぶ『こうのとり』やろ」というアイデアを拝借した。3年後に児島さんも「力になりたい」との思いでスタッフに加わった。

河野さんは当初、高齢者の訪問介護に力を入れようとしたが、障害者は「介護にめっちゃ困っているニーズに気づいた。そこを伸ばそうと思った」。利用者の約8割は障害者で、重度の知的障害者らの行動の危険を回避する「行動援護」のサービスに力を入れている。

介護現場は決して楽な仕事ではない。利用者の家庭に出向き、料理を作るなどの身の回りの世話を行う。地道な実績が認められ、国から「健康経営優良法人」に4年連続で選出。昨年から地元・西淀川区の図書館のネーミングライツ(命名権)も取得した。

7月1日、こうのとりは開設10周年を迎える。河野さんは障害者や高齢者らが安心して暮らせる「社会資源の役割を果たしたい」と強調。児島さんも「一人前の介護人を多く育てたい」と語る。(西川博明)

「介護福祉士」になるには 国家資格の取得が必要で、今年の試験の合格率は82.8%。受験資格を得るには①大学や専門学校などの各指定養成施設を卒業②3年以上の実務経験と実務者研修などを修了③福祉系高校を卒業-のルートがある。経済連携協定に基づき外国人を受け入れる道もある。

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