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半兵衛麸社長・玉置剛さん 新感覚の麩 カフェで提供

産経ニュース 2024年7月7日 10時0分

元禄2(1689)年以来、料亭や寺院を相手に商いを続ける「半兵衛麸」が昨年、五条大橋東詰にカフェを併設した新店舗をオープンさせた。「一昨年、他界した先代がここに店を出したいという夢があり、アクセルを踏みました」と述懐する。

本店は京阪・清水五条駅に近いが、五条通から少し入った目立たない場所にあり、よほどの目的がなければ、駅から清水寺に向かう観光客は店の存在に気付かずに通り過ぎてしまう。

そこで、かつて衣料品店だった五条川端交差点にある3階建てビルに新たな店舗を構えることにした。

新店舗は総ガラス張りのため、よく目立つ。ただ、いきなり「麩を買ってください」と言っても、食べたことのない人には「?」だろう。そんな人に麩の味や歯応えを直接体験してもらおうと考えたのがカフェだった。「カフェは活気あふれる商売にするための新たな挑戦」との位置付けだ。

店は創業335年の歴史を誇るが、「老舗」と呼ばれるのを昔から嫌う。「半兵衛麸は老いた店ではない。また老いた店になってはならない、常に新しいものに挑戦する新店(しんみせ)です」と力を込める。

その言葉通り、従来の素材を生かしながら新商品の開発も欠かさない。暑いこの時期、カフェで出す「柚子(ゆず)氷」。京都産の柚子シロップを使ったかき氷に生麩の載せるこれまでの味に、今年はさらに田楽に使う白みそのシロップをかけることで、より和を強調した。

白みそとかき氷。相性が気になるが、柚子のさっぱり感にやさしいみその甘みが絶妙に掛け合う。別皿で出る焼き目をつけただんご風の生麩も、白みそシロップでかけて味わうと、またひと違った風味と歯応えが楽しめ、人気も上々という。

先代社長の三女、淳さんと結婚。しばらくは京都から離れた地でサラリーマン生活を過ごしたが、出産を機に子供の将来のことを考えて半兵衛麸に入社した。

大学では原子力、サラリーマン時代は損害保険と、全くかけ離れた場所で過ごしてきただけに、厳しい時期もあった。それでも、「よそ者だからいいんだ」という先代の言葉を胸に常に前を見続けてきた。

「先代に経験はかなわない分、私は皆から意見をもらいながら店を運営しています。白みそのかき氷も従業員の提案から始まったもの。まずは店の本質を守りつつ、インバウンド(訪日観光客)に響く商品を開発し、将来は世界で親しまれる味を」と意気込む。(園田和洋)

たまおき・ごう 昭和48年、京都市生まれ。大阪大で原子力工学を学び、卒業後は損害保険会社で勤務した。平成21年に玉置家の三女、淳さんと結婚し、その5年後に「半兵衛麸」に入社した。会社では総務畑を経験、専務を経て、令和3年に社長(12代目)に就任した。昨年には店舗と喫茶空間を備える「ふふふあん」をオープンさせ、新感覚の麩を提案する。

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